Live

08/12/04|Vivian Girls
2Dec2008/The Windmill
08/12/02|Nick Cave and The Bad Seeds
30Nov2008/The Troxy
08/12/01|Leonard Cohen
28Nov2008/Brighton Centre
08/11/28|RTX
27Nov2008/Cargo
08/11/26|Andrew Bird
21Nov2008/St Giles on the Fields
08/11/21|Ryan Adams&The Cardinals
20Nov2008/Brixton Academy
08/11/15|Indian Jewerly/These Are Powers
13Nov2008/Barden's Bourdoir
08/11/14|Fleet Foxes
10Nov2008/Shepherds Bush Empire
08/11/07|Rolo Tomassi/Fucked Up
6Nov2008/Barfly
08/11/01|Release The Bats(ATP concert)
31Oct2008/The Forum
08/10/04|TV On The Radio
3October2008/Cargo
08/10/03|Iglu&Hartly
29Sep2008/Cargo
08/09/17|End of The Road Festival appendix
12-14September/2008 Larmer Tree Gardens
08/09/16|End of The Road Festival Day3
14Spetember/2008 Larmer Tree Gardens
08/09/16|End of The Road Festival Day2
13September/2008 Larmer Tree Gardens
08/09/16|End of The Road Festival Day1
12September/2008 Larmer Tree Gardens
08/09/10|Ponytail
4September/2008 Barden's Boudoir
08/09/09|Plush/The Autumn Defense
3Sep2008/The Luminaire
08/09/08|Rough Trade Instores
The Gaslight Anthem,The Breeders
08/08/30|Conor Oberst and The Mystic Valley Band
27August2008/The Electric Ballroom
08/08/14|Cold War Kids
11Aug2008/Bloomsbury Ballroom
08/08/05|Calvin Johnson
3Aug2008/Elizabeth House Youth Club
08/07/29|Daniel Johnston/Butthole Surfers
26July2008/Rough Trade East--The Forum
08/07/27|Fuji Rock Festival
25July2008/Naeba Suki Resort
08/07/25|The Flaming Lips
20July2008/Lovebox festival
08/07/14|The Magnetic Fields
10July2008/Cadogan Hall
08/07/09|Neon Neon
06July2008/Cargo
08/07/08|Beck/Morrissey
04July2008/Wireless Festival@Hyde park
08/07/05|Jandek
15June2008/The Nave
08/07/01|Glastonbury Festival Day2
28June2008/Worthy Farm

オール・トゥモローズ・パーティーズ

All Tomorrow's Parties (ATP vs PITCHFORK)

11May/2008 Camber Sands(Day Three)

優男イェンス、全員女性バンドでニンマリ(?)
ワンピの女装が妖しかったケヴィン=オブ・モントリオール
ライヴで真価を発揮、ノー・エイジ
ミート・パペッツは今回のマイ・ベスト♪

ATP最終日は、大抵静かめの「チラックス(チル・アウト+リラックス)」できるバンドからスタートする。前夜のサタデー・ナイトにフィーヴァー/弾けすぎた輩のためのちょっとした配慮なのだろうが(実際、月曜の仕事に控え日曜には帰ってしまう人々もいる)、珍しく朝まで騒いでいた今回はその心遣いがしみました・・・というわけで、筆者の日曜一番手だったイェンス・レクマンが織り成すシネマティックでロマンティックなラヴ・ソング集は疲れた頭と身体にずっぱまりだった。
ライヴは初体験だったのだけれど、最新作「Night Falls Over Kortedala」に展開されたオールド・ファッションでゴージャスなポップ・サウンド――フィル・スペクター、リー・ヘイゼルウッド、バート・バカラック、モータウン、マグネティック・フィールズあたりがキーワードか?――は、甘く温かなドリーム・シロップのように耳の中にあふれていく。とはいえ自己耽溺型の閉じたナルシストに陥ることなく、たとえばライヴ・ミキシング卓のスタッフに「次の曲は、失恋した時の自分を思い出しながらミックスしてくださいね」とステージから注文を飛ばしたり(場内爆笑)、テープが鳴らす鉄琴の音色に合わせて「見えない」鉄琴をジェスチャーでプレイして微笑を誘ったり、コンダクター~プロデューサーとして「切ないロマンチストであるイェンス」を主人公にするシアター=ステージを演出していく客観的な視点を備えているのがこの人のイマジネーションの豊かさ~すごさだと思う(彼の書く楽曲自体がストーリーテリング型なので当然かもしれないが)。チェロ、アコーディオン、アルト・サックス・・・とセット・リストを進めるごとにステージにちょっとずづ増えていくバンド・メンバー(全員女性!)もおのおの赤・ブルー・緑・イエロー・オレンジと異なる衣装を身にまとっていてカラフル&ポップだし、そんなプレゼンテーションへのこだわりにも、旧きよき時代のポップ・ミュージックあるいはビッグ・バンド・ジャズへの愛着・憧憬が感じられた。痩せぎすの体躯とフォーマルなルックスにスチュワート・マードックがやたらとだぶるイェンスだったが、まだ見ぬポップの桃源郷をDIYでクリエイトしようとする夢追い人なところも同じだな。しかし、スペアミントや同郷のピーター・ビヨーン&ジョンが浮かぶアコギの弾き語り風が美しいソウル・ポップな楽曲の躍動感が個人的には一番ぐっと来ました。
続いてサブ・ポップのネオ・ハードコア・バンド=ピスト・ジーンズを観るつもりだったのだが、空腹がピークに達したのでやむなく休憩。場内にあるしょぼ~い食堂に座って不味いご飯を食べていてもそのジーザス・リザードやメルヴィンズ並みの爆音は壁越しにビリビリ伝わってきたけど、すきっ腹+立ちっぱなしであのブルータルで「病んだ若い男のフラストレーション暴発」なパンク原始音を聴いてたらたぶん耐えられなかったと思うので、自分の選択は間違っていなかった、と得心。元気を回復したところで、オブ・モントリオール!エレファント6~アセンズ勢はやっぱり見逃せません。近年プリンス型の密室サイケ・ポップで人気上昇中のオブ・モントリオールは、ある意味ポリヴァイナル移籍後伸びてきた大器晩成型と言えるかもしれない(当時のE6ファンのノリとしては、オブモンやエルフ・パワーよりもやっぱりアップルズ、NMH、オリヴィアが御三家っぽかったのですよね)。10年近く前に日本で観た時にも感じた「学芸会ノリ」は変わっておらず、チープな赤ワンピース&どぎついメーキャップ(ドレスの下にはちゃんとジーンズ穿いてたので、脛毛アタックは回避できました:ホッ!)のケヴィンを筆頭に、アラブのベドウィン風トーガ(ベーシスト)、トランスベスタイトっぽい女性Keyプレイヤー、トラの着ぐるみ、ガイコツのボディ・スーツをまとったダンサー(クロムフーフやリー・バワリーを思い出す)との絡みなどステージはまさに百花繚乱のカオス。しかし演奏はがっちりしていて、その一見フリーキーながら堅固なプレイ&グルーヴにオーディエンスも盛り上がり、プチ・カーニバル状態に突入~~!(昨晩のレイ・サヴィー・ファヴといい、アメリカのバンドは掛け値なしの天然ストレンジをパフォーマンスに打ち出せるところが素晴らしいといつも思う)初期オブ・モントリオールのリリカルでベッドルームなサイケ・ポップが好きな向きにはショッキングな光景かもれないけど、ケヴィン・バーンズという人は常にエキセントリックで予測不可能な牙を隠していたわけで。ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーとポップ・リーヴァイ~MGMTを繋ぐ、鬼才(素敵な変態さんとも言う)だと思った。

ここから、三連発で観たいバンドが続くセカンド・ステージにとって返す(=ウッデン・シップス→ノー・エイジ→ミート・パペッツ)。ライヴ初体験となるシスコ発ウッデン・シップスはドローンでダークなデビュー・アルバムの世界観をそのまま踏襲していて、クラウト・ロック的コズミックな反復に頭がグルグルして気持ちいい・・・までは良かったが、次第にそれじゃレコード聴くのと同じではないか?という気も。あからさまなストゥージズ・パクりが(しかしパクりでも)秀逸な「Losin‘ Time」で着火しそうだったんだけど、たとえば音楽的には同傾向のバンドであるブラック・マウンテン(この日メイン・ステージでプレイしていたが、昨年のポーティスヘッドATP出演時に満足したので今回はパス)みたいにバンドの内部で燃えている炎が観客にまで伝わってこなかったのは物足りなくも残念。それじゃ自己完結に終わっちゃうわけだし、本当に観客とコミュニケートしたいのならもっとツアーした方がいいのでは?と思う。
その対極と言えるオープン・アップ&ブリードなライヴを展開してあっぱれだったのが、LAアングラ・アート・パンクの刺客ノー・エイジ。LAダウン・タウンにおいてブルックリン的アート・コミュニティを形成していることでも注目される、アート・スペース=The Smellの看板アクトでもある彼らは、ファット・キャット、サブ・ポップとインディ名門を渡り歩いてきたドラムとギターのふたり組。EPをコンパイルした昨年の「Weird Ripper」(ちなみに、このジャケに写る建物がThe Smellです)を聴いた時点では1曲1曲がとっちらかり過ぎで作品としてのまとまりがない・・・という印象も受けたが、ほぼMCなしでメドレーのように間髪入れず突き進むライヴの形で聴くと、その「すべて一緒くた」のノイズ・アマルガム的勢いが抜群に気持ちいいことが判明。ハスカー・デューのブレイク・ネックなスピードとGBVのポップ・センス~90年代USギター・サイケ勢のトリップ感(フレーミング・リップス・・・というよりも、むしろGlueとかSixteen Deluxeあたりを思わせるB級でやんちゃなあちゃらけ感覚)など、USローファイ・ロックの美味しいところからの影響が連発する様にはやはり興奮せずにいられなかった。満を持してのサブ・ポップ・デビュー・アルバム「Nouns」ではトータルなまとまりも聴かせているが、この無邪気な暴れん坊ぶりをどこかに維持したまま続けていってほしいもの。
おかげですっかり同時間帯メイン・ステージ出演のホールド・ステディを見逃すことにもなったが(口髭がダンディなキーボード・プレイヤーは何度か通路で見かけましたが)、この後に控えるミート・パペッツ復活をちゃんと見れるステージ前方をキープするためには致し方なし(=ホールド・ステディはまたイギリスにツアーしに来るだろうが、カークウッド兄弟はいつ再び観れるか分からない)!基本ヤングな層が占めるATPとは思えないほど場内オーディエンスもいつの間にか年配な男性度(40代かな)を増していて、「ミートヘッズ」の静かな熱気がじわじわ肌に伝ってくるよう。たぶん、このバンドの久々の英国上陸&兄弟揃い踏みを観るためだけにATPにやって来たダイハード・ファンも混じっていたんじゃないかと思う。それくらい80年代USハードコア・パンク~インディ黎明期のカルト・アイコンとしてリスペクトされ、若いロック・ファンの間でも「ニルヴァーナのカート・コバーンが溺愛したバンドのひとつ」として認知されている彼らだが、大喝采に包まれて始まったその演奏は(ぼうぼうに伸びたカーリー長髪をポニーテールにきりりとまとめていたカート&クリス同様)恐ろしくシャープ。予習として(笑)「Live in Montana」を聴いてきたのだが、あの録音から20年経った今もこのバンドの放射するエネルギーは変わっていない――というか、それだけ当時から迷いなく自分達のアートを追求していたのだろう。
カントリーやブルース、ブルーグラスを咀嚼したリズミックでプライマルなオーガニック・グルーヴをプログレ・バンド並みの精度で叩き出し力強くジャムっていく様に、ギター/ベース/ドラムの繰り出す完璧なハーモニーに、クリスが浮かべる邪気のない笑顔とファンキィなベース・ラインに、こっちの体温もぐいぐい上昇。3曲目でベース・アンプがダメになるハプニングも飛び出したが、まったく意に介さず演奏を続けていくカートのプロで職人なたたずまいもかっこよかったし、と同時にその飼い慣らされない大らかで天然なミュージシャンぶりになぜかブリーダーズのキム&ケリー姉妹が頭に思い浮かんでちょっと涙もこぼれた(そういう「無防備な」ミュージシャンほど、ドラッグやアルコールに蝕まれてしまうことが多いので)。代表曲を多く含む「Meat PuppetsⅡ」からの楽曲はやはりリアクションが大きかったが、ジョニー・キャッシュのカヴァー、「Up On The Sun」などが個人的にはしみたし、(ブラック・サバスではなく)ビートルズ「Tomorrow Never Knows」をメドレーで間に挟む茶目っ気も含め、パンクなエネルギーとド迫力なプレイヤビリティでいくつもの音楽ジャンルを悠々横断していく様は圧巻だった。フィナーレはブルドーザー級のぶっといサウンドで3人が一丸となって炎上したジャム・インスト。集客では他のアクトの方が勝ったかもしれないけど、今回のATPでもっとも熱くエモーショナルな喝采が送られたライヴだったと思うし、筆者が同行したルーム・メイト全員が「いいライヴだった!」と意見の一致をみたのもミート・パペッツだけだった――というわけで、最終日にふさわしい大団円を気分的に早くも迎えてしまい、締めに観るつもりだったハルモニアはパスしました(ちょっと観たんだけど、去年クラスターとして2人でやったライヴの時とさほど変わらなかった&あれ以上に音がアンビエントだったので途中でマジに眠くなってきた)。


All Tomorrow's Parties (ATP vs PITCHFORK)

10May/2008 Camber Sands(Day Two)

水墨画のように静かにしみたボン・イヴァー
意外と暴れん坊だったディアハンター

2日目も雲ひとつない青空と太陽が頭上から「おはよう」と迎えてくれる。コーヒーを淹れながら宿舎の窓から外を見やると、牧草を食む羊達もさすがにこの気温の中、厚いウールの上着にうめいているようだ・・・(と、クサい旅行随筆風な書き出しにしてみました)。ATPTV(各宿舎備え付けのテレビの2チャンネルを使い、ATPとピッチフォークがセレクトした映画やドキュメンタリー、コメディなどを24時間ケーブル局風にOAしている。イアン・スヴェノニアスの「Soft Focus」ケヴィン・シールズ編が一番面白かった)で「JAWS」を観ながらダラダラした後、最寄のスモール・タウン、キャンバー探索にみんなで出発。しかし驚いたのが、フェスのサイトを出るや我々とは逆方向=キャンバー・サンズ(美しい砂浜ゆえにこの名前)に向かう車の渋滞が長~~く続いていたこと。これだけの天気で土曜とくれば、ロンドンから家族連れがわんさか海辺にやって来るわけです。キャンバーはおっとりオールド・ファッションなイギリスの田舎町で、レンガよりも石造りの家が多くてちょっとスコットランドっぽい。ティー・ルームだのレトロな駄菓子屋だの、うちの母親が見たら喜びそうだなあ・・・と思いつつランチを終わらせ、1軒だけぽつんとあった中古レコード屋をチェックして宿舎に戻ることに。

オーディエンスの多くもビーチに繰り出したり外の芝生でのんびり飲んだりしているが、マタドールが送り出す新人タイムス・ニュー・ヴァイキングは(午後早い時間帯にも拘らず)かなりの集客。ガイデッド・バイ・ヴォイセズとジョナサン・リッチマンがパンクにジャムっているような元気いっぱいの演奏で、2日目のいい幕開けになりました。今回一番楽しみだったアクトのひとつ、売り出し中のニューカマーSSWボン・イヴァーはマット・ウォードをより素朴にしたような穏やかな歌声とひなびた演奏(バスドラ・スネア・シンバルのみと、ドラムスも非常に簡素)が幽玄なハーモニーを醸し出し、いっとき暑さを忘れさせる静謐なひとときにじ~んわり。ウィスコンシンの山小屋でひとり曲を書いていたというこの人、聴いていると本当に森が見えてくるようだった。とはいえロッキンな曲ではニール・ヤングな表情も見せてくれたし、今後バンドがトリオから5人くらいに増える可能性もありそう。
再びセカンド・ステージに引き返し、ワープの注目新人ボーン・ラフィアンズ。カナダ出身のこの3人組、軽快に転がるビートといいギター・カッティングといいどれもピシッと引き締まっていて、ほんと小気味良いピリカラ山椒型バンド。「We Jam Econo」を実践しているパワー・トリオってのは、やっぱりいいもんですね。2、3ヶ月前に観たイェーセイヤーは果たして成長したかしらん?と確認がてらチェックしに行く。む、結構混んでいる。前回はネオ・ヒッピー的だったメンバーが全員短髪になり、ルックスも謎のブルックリン・ラッパー風情になっていて確かに変化は見られた・・・んだけど、うーん、やっぱりこのバンドはまだライヴに一体感やグループとしてのグルーヴ(シャレじゃありません)が足りないと思う。硬いっすよ!リンジー・バッキンガムが憑依したようなアルバムの内容はすごく好きなんだけどなあ。残念。ハウリン・レインの初期ディープ・パープル~ハンブル・パイ的クラシック・ヘヴィ・サイケをしばらく観て、これまた今回マイ必見アクトのひとつ:ダーティ・プロジェクターズ。エフェクターを一切使わないでこれだけ表情豊かなギター・サウンドを聴かせるバンドは珍しいし、デイヴィッドと女性ヴォーカル2名の織り成す緻密なカウンター・ハーモニーはやはりミラクルな美しさ。この日のベスト・トラックは、「Imagine It」の激しくエモーショナルな隆起と「Thirsty and Miserable」が発した揺らぎ/爆発の鋭利なコントラスト、デジ・ドラムが新鮮な新曲「Demecula Sun」。ニュー・アルバムが楽しみです。
後半戦はブラッドフォード・コックス率いるディアハンターから。1曲目はピンク・フロイド「Interstellar Overdrive」をもっとノイジーかつ攻撃的にしたようなスペース・ロックで、女性メンバーも混じる5人編成/ギター3本がバズーカのごとく噴き出す様に脳内にドーッと血流が駆け巡りました。この人知人の男性に似ているな・・・と思いつつ観ていたら、一見おとなしそうなそのブラッドさんがカマキリのような長身でモニター・アンプの上に立ち上がり、暴れ始めたのにはびっくり。ライヴの方が攻撃的でエキセントリックと聞いてはいたけど、想像以上でした。とはいえこのバンドのメロディは基本的にサッド&スウィートで、どこか子供のまま大きくなってしまった人間が作る音楽のような切なさ~無邪気さがあるのが良い。今夜の締めは昨年の「VS Fans」に続き2年連続登板の人気者パーティー番長、レイ・サヴィ・ファヴ。ティムさん今回はピンク・パンサーの着ぐるみ姿(→めちゃ暑そう・・・)で、相変らず唯我独尊なパフォーマンスに痺れる。電撃ショッカー・パンク・ロックのエッジーな速射砲がフロアをパンパン射抜く中、酔っ払ったキッズ達がひたすら踊り暴れまくる様は実に爽快。たぶんみんなあのままホット・チップをエンジョイしたのだろう。

宿舎に戻ってからは、羽目を外せる最後の晩=土曜日ってことで深夜のDJパーティーに突入。ターンテーブルとスピーカーを持参した知人がアナログを回す中、三々五々集まってきた友人とその友人達がお酒を酌み交わしながらノーザン・ソウルやサイケで盛り上がり、踊り始める。ふと気が付くととっくに3時を回っていて猛烈な眠気に襲われたが、あれ?あなた誰?いつからいました?という赤の他人が何人かソファーに座って雑談している。朝まで飲み倒れ・パーティー倒れは当たり前な若者がレコードを聴きつけて部屋に入り込んだみたいで、ちょっと目を離したうちにいつの間にかいなくなっていた。彼らはきっと音と人を求めて朝までさまようのだろうな。しかし一番おかしかったのが、朝4時にどこからともなく出没したさすらいの舞踏カルト集団(笑)。もちろんカルトというのは冗談だが、夜明けちょっと前の仄明るい宿舎ブロックの中庭に静々と現れた20人ほどの男女がリーダー(ポータブルのステレオもわざわざ持参)に合わせてアイドル・グループ風のダンスを繰り広げる様は、かなりシュールで笑えた。しかも1回ダンス・ルーティンが終わるごとにお辞儀して、また20メートルほど移動して同じことを繰り返す・・・というのもヘンで、カモメ達と共にみんなで呆然と見守ったのだった。前々回は鍋カマ・フライパンをチャカポコ鳴らしながら朝まで宿舎の敷地を行進していた一群もいたし、フェス・ピーポーって変わったことを思いつくもんですね。


All Tomorrow's Parties (ATP vs PITCHFORK)

09May/2008 Camber Sands(Day One)

ATP史上最高のピーカン日和に恵まれました(たぶん)
レトロな英国ビーチ風景
ダイナソーとは違いルーが溌剌している気がしたセバドー
ウィーン3時間、どうすか?

12月のポーティスヘッド以来!しかも今回は古巣Camber Sandsに戻っての開催だ!・・・ということで、3人のルーム・メイト(ご存知の方も多いと思うが、このフェスは「シャレー」と呼ばれる宿泊施設付き。文字通り「3日間インディ強化合宿」なのだ)と共に指折り数えて待っていた今回のAll Tomorrow’s Parties。なぜMineheadではなくCamberに今回だけ戻ったのかその理由は不明だったが、古臭くても多少不便でも、やはりCamberのこぢんまりしたアット・ホーム感はいい。フェスというより、コミュニティという感覚が確実に流れていると思う。キュレーターはUSオンライン・マガジンの猛者にして日本でも音楽ファンにはおなじみのピッチフォークだけに出演ラインナップも注目新人からベテランまでなかなか充実していたし(翌週行なわれたエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイの内容も秀逸だったが、比較検討した結果やはりミート・パペッツとセバドーは逃せないという結論に達しました)、何より新鮮だったのは筆者がこれまで体験してきたATPの中でもベストな天候に恵まれたこと。参加者も常以上にリラックスしていたし、一足早いサマー・フェス・モードを満喫していたように思う。まあ、冷房という概念が基本的に希薄な国だけに場内サウナ状態で死にそうになる場面もあったけどね・・・。

とはいえ初日の道中は波乱含み。徹夜仕事の連続がたたり、参加メンバーの1人があわや脱落~~?というくらい待ち合わせに大遅刻。受付でリストバンドを入手した頃にはメインステージ2番手:ヴァンパイア・ウィークエンドが既にセットの半分くらいを消化していて、ベソをかきながら会場に駆け込む。日中27度近くまで気温が上昇しただけにすべての窓を黒幕で覆った場内はただならぬ暑さだが、彼らのダンサブルなリズムと軽快なギター、シャープな演奏と「One」でのコール・アンド・レスポンスなどラヴリー&ハッピーな雰囲気に不快指数も一気に急落。夏の解放的な気分がよく似合うサウンドに、08年のマイ・サマーをキック・オフしてもらった気がした。
宿舎で荷物を整理し、急いでとって返して再始動セバドー!ロンドンでの「Don‘t Look Back」(『Bubble&Scrape』を全曲演奏)を始め、4月末以来UK/欧州公演をこなしてきた後だからだろうか、ルー、ジェイソン、エリックの演奏は実にパワフル&エクスプロージヴで若々しく、『SebadohⅢ』の曲などもいまだにフレッシュに響く。本人自身心から楽しそうにのりのりでプレイしている様には胸打たれたし(ダイナソーの時とはやっぱり違うなあ)、セバドーの枯れた泣きのあるギター・ポップは不滅。友人達とリクエストした「Rebound」をプレイしてくれなかったのは残念だったけど、贅沢は言うまい。
階下のセカンド・ステージでは、ATPが運営するレーベルからアルバム・デビューを果たしたブリストル出身の2人組ファック・ボタンズが熱演開始。ここのところ上昇している人気を反映して、かなりの人込みだ。おのおの小型のトランクに詰めた機材を机の上に乗せ、向き合ったメンバーがスペクトラムなノイズ+クラウト・ビートの暴風雨を黙々と作り出していく様はやはり盛り上がる――のだが、以前観た時とそんなに変化がない内容だったのでそこそこにして切り上げ、この日のメインのトリ=ウィーンと8年ぶりの再会を果たすことにする。キャリアが長いとはいえタイム・テーブルに「9PM-12AM」と書いてあるのはさすがにミスプリ?とも思ったのだが、マジに3時間マラソンだった・・・(ATPでこれだけ長いステージを披露したのは、他はマーズ・ヴォルタだけではないだろうか)。さすがに体力が尽きてきて1時間観戦が限度だったけれど、ヘヴィ・メタルとジャズ・ロックがエネルギッシュにミクスチャーされ、しかもメロディは癖になるほどポップ!というウィーンの変態な魅力はまったく衰えていない。アイデアが面白いとかセンスが斬新とかヒップで若者に人気だとか色~んなバンドが登場するATPだけど、アートやインディ、アヴァンギャルドに偏ることなく本当の意味で「上手い」プロなバンドでありエンターテイナーであるウィーンみたいな連中もブッキングしてくれるところが、やはりこのフェスの良さだなあ・・・と、ノリノリのウィーン・ファン連中(→男ばっか)と歓声を上げながら改めて思った。この後にもレッド・クロス、グラス・キャンディ、ホット・チップ(DJセット)などが控えていたのだが、今回のメインである土日に向けて体力を温存すべく早めに宿舎に戻ったのだった。


というわけで、雑感から。

前回=ウィークエンド・ワンから約3週間、再びマインヘッドに戻ってきたATP(この後スペインのプリマヴェーラ、アメリカのピッチフォークに遠征予定。なぜ日本に行かないのさ?!)。「対ファン」というタイトル通り、これまでソニック・ユース、モグワイ、シェラック他が担当してきたキュレーター(宴会で言えば幹事~仕切り役)は、なんと我々オーディエンスが一部負担だ!イェイ!①過去以上に大きな新会場への移動も成功&定着②海外フェスへの進出開始と、昨年末からイベントとして大きな節目を迎えつつあるATPからファンへの、「日頃のご愛顧に感謝」大盤振る舞い・・・というわけで、ATP側が決定したアクトに加え、フェス参加者からの希望を反映させる社会主義実験が行なわれることになった。今年春から参加者による人気投票(チケット購入者に1人あたり10組の出演希望アクトを選出する権利が与えられた。順位が高いグループから、ATP側が出演オファーを出していく仕組み。ちなみに筆者の希望はウィルコとサトルの2つ実現したので、打率としては、まあ悪くないと思う)が始まり、ATPウェブサイトは大賑わい・・・とここまでは良かったものの、フタを開けたら意外やATPキッズの冒険心が薄いことが発覚したのだった。ムムム?

「好きなアーティストを」という気持ちは山々だけど、インディ・プロモーターであるATPの規模(集客は5000人程度)では出演料が出せなさそ~な人気高騰バンド、あるいは他の商業系ビッグ・フェスにラインナップされている(=わざわざATPで観なくたっていいじゃん)ようなアクトが多くチャート・インしていて、それよりも普段イギリスにツアーしに来ないバンドや滅多にライヴをやらないアーティストをこれを機に!と願う身としては、「うーん、みんなもうちょっと知恵絞ろうよー・・・現実的になろうよー」と、(ウルトラおせっかいは承知で)ヤキモキしていた次第。その事態にATP主宰者バリー・ホーガンも業を煮やしたらしく、途中から投票時の参考資料として「ATPがこれまで企画してきたライヴ」のリストを公表、手が出なさそうな国際ビッグ・アーティスト(ビョークとかボブ・ディランとかね)は諦めるように(?)とファンを諭したり、下方にランク・インしているアーティストにもオファーを出したり、裏工作に走っていたのには笑ってしまった(「ディアフーフを選んだ皆さん、残念ながら彼らはその時期ニューヨークでボウイがキュレートするフェスに声がかかったそうで、ATPに出てくれません。にしてもボウイ、そのアイデアをどこからパクったんだ?」とクサしていたけど、キュレーター・フェスならATPよりメルトダウンが先なので、バリー・ホーガンもあんまいい気にならないように)。
最終ラインナップも、①ベスト・オブ・ATP的「鉄看板バンド」(モグワイ、シェラック、スリント。毎回品質保証付きの超定番)②ATPらしからぬアクト(GO!チーム、エコー&ザ・バニーメンなどに古株ATPファンは「なんで?」と不満顔。ちなみに、筆者は間違ってもまだ古株ではありません)③エヴァーグリーン組(ダニエル・ジョンストン、ヨ・ラ・テンゴ他、いつ何度どこで観ても感動させられる人々)が混じり合い、これまで筆者が参加したATPの中で、もっともとっちらかった内容だったのはちと残念――なんて書くと「スノッブ」「インディ・エリート主義」と後ろ指さされそうだけど、この投票企画自体=オーディエンスとのインタラクティヴなフェス作りというアイデアは素晴らしいし、それだけファンとコミュニティを信頼しているATP側は立派ではある。毎回配布されるプログラムに、投票者全員の名前が印刷されていたのも泣けたね(オレの名前もあったぜ~!)。しかし、残念ながら今回は、その理想に我々ファン側がまだ追いついていなかったんじゃないか?と思った。
オーガナイザーのこだわりや精神が感じられるフェスが決して多くない中(フェスのほとんどがその年サーキットを回っている現在人気アクトをかき集めているので、被りが多くて似たり寄ったり)、キュレーターを立てることでATPは一本筋を通してきたし、商業フェスではお目にかからないような「発見」にも筆者は数多く出会ってきた。老舗コンサート・エージェント/プロモーターにパイプを占領されている(であろう)国産アクトよりも、海外アーティスト(主にアメリカ)の欧州への「輸入」に重点を置くことで差別化を図った先見の明・着目点の良さにはこちらも大いに恩恵を受けている。しかし今回打った博打は、奇しくもファン側の安定/多数派志向を露わにする形になったんじゃないだろうか。

と同時に、久々にATPに来た知人が「会場が大きすぎだよ~、がっかり!」と漏らしていたように、昨年から年2回開催、冬のナイトメア・ビフォア・クリスマスからキャパを拡大した結果、ATP側もそのアイデンティティを変えつつある。これまで(英国内における)プレミア・アンダーグラウンド~インディ・フェスとしてほぼひとり勝ち状態だったATPも、フェス戦国時代に突入してうかうかしてはいられなくなってきた(ファン投票の上位にいたアーケード・ファイアをLatitude Festivalにかっさらわれ、相当悔しかったはず)。昔のようにコアな方針を通せば商業的に支障をきたす恐れがあるし、チケットを売ってくれるコマーシャルなバンドを招けばフェスの個性が失われる。イギリスならではのホリデー・キャンプというシステムを活かした宿舎付きフェスというアイデアを始め、優れた企画力を誇るATPだけにその存続は切に願うものの、バランスは難しいですね。
まあ、そもそもこんな特殊で素敵なフェスを年2回(ナイトメア~も含めれば3回)も開催すること自体、無理があるんじゃないかとも思いますが(キュレーターのネタも尽きるだろうし、客としても懐厳しいっすよ)。昔ながらのポリシーとフェスとしてのブランド・ヴァリュー確立との狭間=分岐点に立つ、そんなATPの模様をリポートします~なんて思ってたら、次回=12月開催ナイトメア~のキュレーターはポーティスヘッドだわ!やっぱりまた行かなくちゃっつーわけで、ATP積み立て貯金を開始したとこです・・・やっぱ、このフェス好きなのね自分。


Subtle

20May2007ATP vs YOU the Fans=Day3

鬼才ダズワンにキッズものりのり
アンコール、WHY?と揃い踏み

いよいよオーラスでっせ!というわけで、ATP3日間を締めくくるにふさわしいワン・アンドオンリーな米西海岸発音楽集団、サトルの登場です。かつてワープ傘下だったLEXからリリースした最新作「For Hero:For Fool」も好評を博している彼らは、アンチコン・アクト・ファミリーとして数々の作品を発表してきたMC/シンガーのDoseoneとJelの2名(このふたりがゼムセルヴスの核)にダックス・ピアソン他が加わって2001年にデビューを果たした6人組バンド。ヒップホップが音楽性のベースにあるのは間違いないが、そこにロックやエレクトロニカ、クラシックなどあらゆる音楽およびメディアを自由奔放に化合させていく彼らを、筆者はアウトキャストとTVオン・ザ・レディオ(一緒にツアーもやってます)の中間に位置するような、ハイパー・ハイブリッドなモダン・プログレッシヴ・ポップ集団では?と思っている。どのバンドも、やってることはハイブロウなのに、メロディが良くて聴きやすいのが特徴。自分みたいなミーハーにも、気軽に楽しめるところが素敵です。

フェス最終日:深夜を回ってもまだ元気の残っている観客が結集したサード・ステージに、メンバーが黙々と機材を積み上げていく。現在のサトルのステージは、中央に祭壇めいた縞模様のドクロをいただいた胸像が置かれ、その周辺を5人(サンプラー、チェロ、パーカッション、キーボードなど)がぐるりと取り囲むユニークな設営。ピンク・フロイドの「Another Brick In The Wall」を思わせるムーディなイントロから始まる「A Tale Of Apes 1&2」でライヴはキックオフ、ステージ衣装にいつの間にか着替えていたDoseone(セッティング中は普通のTシャツ姿だったのに~!素早い)がセンターに踊り出し、エキセントリックな声(鼻声というか、甲高いおばちゃん声というか)でマシンガン・ラップを乱射していく。この人のフロウと意識の流れをノンストップで垂れ流していくようなメカニカルなライムは本当に個性的で、一度聴いたら決して忘れない。
というわけで、ライヴを引っ張っていくのはDoseoneの強烈なステージ・ペルソナ。手作りの摩訶不思議なコスチュームはもちろん(今回は黒が基調だったけど、以前観た時はサテン白づくめでかなり眩しかったです・・・)、巨大な赤いカギ束を始めとするジャンクなアクセサリー、ごつい縁取りの眼鏡というシアトリカルないでたちは、時代からもトレンドからも切り離された近未来のマッド・サイエンティストといったところ?曲の合間に語りも披露するのだが、まったく関係のなさそうな逸話を話し始め、(「1年に何羽の鳥がビルにぶつかって死ぬか、みんな知ってる?」とかね)そこから曲にジャンプする飛距離/脱臼感は爽快にぶっ飛んでいる。それだけでも十分面白いのだが、頭蓋を開けてプラスティックのフォークを取り出してバラまいたり、トランプを使ったり赤いハンカチを血に見立てるなど、小道具を駆使した寸劇の数々を披露しながら(ドクロを相手に歌う姿は、昔のボウイをちょっと思い出しますな)彼の中で巻き起こっているマニックな想念と言葉を大汗をかきかきヴィジュアル化していく。そのプロセスはまず単純にダイナミックだし、そのエネルギーに引き込まれ、ぱっくり口を開けた非日常的世界にこちらも落ちていく。頭脳と肉体をフル回転させた、こんなにめくるめくパフォーマンスをやっているアーティストは、今他になかなかいないだろう。
身体へのフェティシズムとアメリカン・ライフの奇妙さが入り混じる、幻想とも悪夢ともつかない「For Hero~」の世界を展開していくDoseoneの舌技はとにかく圧巻!だったが、それを支えるバンドも屈強。ほとんどプログレ・バンド並みの複雑なアレンジからフィジカルなヒップホップ・ビートまでさらりとこなす姿はかっこいいし、サンプラーやキーボードを多用しているものの、出てくるサウンドはあくまでオーガニックなのでロック的な盛り上がりも自然に生まれる。全員の一体感とタイトなミュージシャンシップが麗しいこの演奏だけでも、ごはん3杯は軽くいけますな。「For Hero~」の楽曲がメインのセットで、特にキャッチーな「Middleclass Kill」や「Midas Guts」やシングル「The Mercury Craze」は大ウケ。ダイナミックな音の渦&波にオーディエンスも白熱し、珍しくアンコール(最後だったからオマケだったのかもしれないけど)に応え再び登場したメンバー・・・の中に混じっているのはATP初日に出演した、盟友WHY?。ひときわ大きな喝采が寄せられる中cLOUDDEADの「Dead Dogs Two」のひなびたビートがスタートし、それまでのテンション高い演奏から一気にほん~わかサイケデリックに脱力してくれたのは、なんともシャレていてかつ気持ちよかった。簡単にジャンル分けできないバンドだけど、音楽の受容器官を全方位で刺激されマッサージされ、ぐんにゃりしたい方は、ぜひ聴いて(できれば観て)みることをおすすめします。


Modest Mouse

20May2007 ATP vs YOU the Fans=Day3

左がジョニー、右端がアイザックです

新作「We Were Dead~」発表直後のイギリス上陸となったモデスト・マウス。イギリスでは前作からのシングル「Float On」のスマッシュ・ヒットでやっとこさ注目を浴びたところだが、「グランジ以降」の米北西部シーン(シアトル、ポートランド、オリンピア)を盛り立て続け、メジャー移籍後もたとえばサブ・ポップ・ルネッサンスに大きく寄与したり、10年以上のキャリアはUSインディ・ファンから強い支持を受けている。とはいえ、最後となったアメリカ:ロサンジェルス版ATP(03年)のキュレーターを担当したり(あの会場悪くなかったので、なんとか再現してほしいんですけどね)実はATPとも縁が深く、今回やっと本家=イギリス版に登場することになったのは、モデスト・マウスとATP双方のファンとして、ちょっと感慨深かったりします。
しかし、「We Were Dead~」が常以上に大きな話題を巻き起こした理由のひとつに、ジョニー・マーの加入が上げられるだろう。もともとは「様子見」から始まったジャム・セッションが、あまりにウマが合ったためアルバムに発展、遂にはバンドのオフィシャル・メンバーに迎えられた・・・というのは珍しい話。最初にモデスト側からオファーがあった時、シンガー・ソングライター=KID4077として売り出し中の息子ナイル(15歳)に「父ちゃん、絶対受けるべきだ!」と薦められてセッションに向かったという話もあるし、ここしばらくポール・ウェラー的な「かっこいいオヤジ道」をたどりつつあった感のあるジョニーにとっても、今回の共演は若いファンにリコネクトできる格好のチャンスだったと言える。ザ・スミスの中で、実は一番普通にロッカーだった人が彼なので(モリッシーは詩人で預言者)、やはり彼にはギターをがんがん弾いてほしいです。最後まで。

モデストの前にメイン・ステージに出演したバット・フォー・ラッシェズが大いに盛り上がった後(彼女、ほんとに人気ですね)、ステージ前方に陣取りバンドの登場を待つ。ドラム・キット2台(ブラック・ハート・プロセッション他のジョー・プラマーがパーカッショニストとして定着)、キーボード、バンジョー、アップライト・ベース、アコーディオンなど次々に運び込まれ、なかなかに壮観。彼らはストレートなロック・バンドとしてもめちゃくちゃかっこいいのだが、過去2、3作で広がったサウンド・パレットを反映した今のステージはより多層的で奥行きがある。ウィルコ同様、アメリカのバンドはこうして徐々にシンプルなロックンロールから世界を広げていくプラス傾向があると思うし、だからこそ長く付き合える。その冒険心(たまにファンから失敗作と言われることもあるけど)は、たとえばオアシスには真似できないだろうなー。ま、全然違うバンドですけどね。
メンバーが配置に付き、最後にアイザック・ブロック登場、拍手が湧き起こる。相変らずガタイはでかいしタバコは吸うわで(禁煙したんじゃなかったの?!)、見た目はアメリカのオールド・スクールなタフガイ(ジョシュ・オムに似てるよね、佇まいが。どっちも大好きだけど)。しかも新作のUKお披露目ライヴ&ジョニーの里帰りなだけあって気合も入りまくりで、演奏は1曲目から早くもバースト!/アイザックの頭からは湯気が立っているようにすら見える。ポップな疾走感がみずみずしい「Florida」でバランスを掴んだのかウォーム・アップも終わり、アルバムからのファースト・シングル「Dashboard」の小気味良いリズムがスタート、オーディエンスもやっとヴィヴィッドに反応し始める。モデスト・マウスの楽曲はちょっと複雑で、歌メロとビートがそっぽを向きながら、しかしなぜか調和していく・・・という妙がなんとも痛快なんだけど、この曲はそれがポップに結晶したいい例。この時点で、筆者は踊りまくり状態に突入です。ジョニーも、ギターはもちろんだけどコーラスでも相当貢献していて、その「ワンオブバンドメン」な自然な感じがよろしい。アメリカ経由でイギリスに帰還というルートに面映さを感じているのか(?)MCも控えめかつやや皮肉なトーンだったけど、80年代組UKバンドがアメリカで珍重され活路を見出しているのは今に始まったことじゃないので(ザ・キュアー、ニュー・オーダー、モリッシー他)、テレないでほしいと思います。余計なお世話だが。
しかし続く泣きの名曲「Fire It Up」(アルバム通りの順番ですね)では反復&アイザックのモノローグめいた歌唱をメインにしたストイックな世界がじんわり広がっていき、硬派ながら繊細さを併せ持った彼らの懐深さに胸打たれる。筆者が一番好きなモデストのアルバムは「The Moon and Antarctica」なんだけど(我ながら暗いっすね)、こんな風に闇や弱さを女々しくなることなく打ち出せるバンドは、やはり好きです。「We’ve Got Everything」でがっちりタフに揺り戻し、古いアルバムからの楽曲も織り交ぜつつ、やはり一番盛り上がったのは「Float On」。この曲の「All Right!」コーラスには何度でも励まされるけど、ヨーロッパの前に回ったUSツアーほどの盛り上がりにはやはり達することなく(観てないけど、確実にシンガロングだったと思う)、ちょっと残念。ほぼ1曲ごとに楽器パートを入れ替え、パワーと美、技を凝縮したバンド力を展開している今のモデスト・マウスは、たとえば楽曲を知らなくても、純粋にパフォーマンスだけで聴かせることのできるバンドに成長したと思う。誰かのエゴが突出するとバンドは途端にうざったくなるものだが、モデストは全員がフラットに貢献している。ジョニー・マーという、たとえばイギリスのバンドマンだったら畏れ多くてひれ伏してしまうアイコンが、このバンドの「一部」になることを了承したのは、そんなピュアなミュージシャンシップがモデスト・マウスの中に存在するからだろう。とはいえ、そんなタイトな時期が永遠に続くとは限らないので(バンドも体力と集中力、体力&年齢の賜物だからね)、サマーソニックの来日は、万難を排して観てもらいたいなあと思います。


今ATP1,2位を争う内容、シェラック

前日に続き、今ATP2度目の登場はセカンド・ステージとなったシェラック。内容的にはそんなに差はなく、鉄壁のヘヴィ&ストイックな演奏だったものの、個人的にはだだっぴろいメイン・ステージで観るよりもやはり集中できた。3000人は余裕で入りそうなかなりの広さだったんだけど、アルビニの腰巻きギター・ストラップが肉眼で観れるのは、やはり盛り上がりますね。彼らのように一音一音真剣勝負のバンドは(まじに、ギター、ベース、ドラムのどれひとつとして無駄がない)、ぎっちり詰まった閉所恐怖症的空間で、こっちも動悸を上げて汗かきながら(?)観るのが一番合っている気がする。「The End of Radio」とか、まじ鳥肌ものでした。面白かったのが、観客の茶化し系ヤジに切れ始めたトッドが、「黙れ!俺たちはファッキン・エクセレントな音楽をやってる!お前のせいで気分が悪い」と啖呵を切った場面。かっこいいぞー!シェラックのギグは、ボブ・ウェストンの悪意に満ちたMCでオーディエンスをたじろがせるのが常套手段なんだけど(もちろんすべてジョークなんですが)、今回は珍しくバンド側が熱くなってたかも。とはいえアルビニはまったく動じることなく、オーディエンスの敵意や反感、殺意を吸い込むことで、更に凶暴な音打&音圧&鉄板を引き裂くごとき摩擦音で応酬してみせる(いつも思うが、シェラックとファンの関係ってややSMかも)。ビッグ・ブラックの頃から、この人の聴き手の中にある中道主義や馴れ合い、良識と対峙する姿勢は変わっていない。愛がなければできないよね。リスペクト。
それに較べると、スリントはやや緊張感に欠けていたか。残念。インスト・バンドなのでこちらの体調や気分が左右する面もややあるとはいえ(ハイ、最終日で疲れきってました)、再結成以降生まれた新機軸が感じられないので、ガラスの棚に入った芸術品を眺めるような気分。途中で切り上げることにし、アイシスに行ったらこちらは爆裂!で、一気に体温が上昇。盤で聴くともうちょっとムーディーでストーナーなところもあるのだが、マストドン並みにプロパーなヘッドバンギング・メタルぶりもデス声でカマしてくれたり、大音塊の波状攻撃はド迫力だった。一方で、インスト・トラックでは幽玄かつスピリチュアルな空間を作り出していて、このバンドはアート・フォームとしてのメタルを真剣勝負で追求しているなあ・・・と感動。どこかでモグワイが観ているに違いないと場内をきょろきょろしていたら、シェラックのトッドが食い入るようにステージを眺めていました。あまり客入りの良くなかったエコー&ザ・バニーメンを一瞬観て(ちょうど「Bring On The Dancing Horses」をプレイしてた)、ATPのように非コマーシャル主義の音楽が集う場では、エコバニみたいな音は異様にメジャーに聞こえるなあ・・・と思いつつ、いざいざビルト・トゥ・スピルへ!ダグ・マーシュが飛行機嫌いということもあり(んなわけで筆者もアメリカに観に行くしかなかったのだ。友人は、ATPの前にわざわざノルウェーまで観に行く始末)、かな~り久しぶりに決行された欧州公演の一環がこのATPだったんだけど、待っていたファンがぎっちり詰め掛けていて、それだけでも相当にエモーショナル。ギター3本で繰り出されるグルーヴは相変らず正確無比で、そこから天駆けるギター・ソロに転じるエピックな場面にはいやおうなく胸ゆさぶられる。ダグ・マーシュ以下、メンバー全員パッショネイトな演奏で、歌と技の合わさったなんていいバンドなんだ・・・と改めて感じる。最新作からの曲はさほど多くなく、やはり久々のUK上陸だからだろう、「You Were Right」「Car」他、往年の名曲オン・パレードに号泣。次作のレコーディングも順調に進んでいるらしいので、こんな風にもっと世界各地でツアーをやって、ライヴが本領の彼らの底力をファンに伝えていってほしい、と切に願います!サイケデリック・フォークの旗手:ブライト・ブラック・モーニング・ライトの優しくもダークなハッピー・ナイトメア・サウンドに癒された後、オーラスのサトルに向け、ラスト・スパート。最終日はサード・ステージの順番がかなり変更になり(ダニエル・ジョンストンがまた出演していました)、おかげで観れないと思ってがっくり~だったサトルの裏=グリズリー・ベアが聴けて超ラッキー。前回のロンドン公演はちょっとムラがあったので心配だったけど、「Colorado」に、今回はがっつり泣かされましたよ・・・幸せ・・・。


Wilco

19May2007 ATP vs YOU the Fans=Day2

頑固なジェフおやじの勇姿
職人集団?ウィルコ07

「Summerteeth」から前作「A Ghost Is Born」に至る音響実験を後にし、最新作「Sky Blue Sky」でオールドスクールかつ抑制の効いた、いわば大人のロックを展開してみせたウィルコ。ソングライティングは王道ながら、エフェクトや音作りといった細部にとことんこだわることで伝統にモダンを注入した彼らは、機材やレコーディング技術など、テクノロジー(必ずしも最新の、ではないが)のアートがいかに音楽=複製芸術の要であるかを改めて指摘したロック・バンドと言える。その姿勢が、ヒップホップや宅録を通過した世代の耳にも彼らがアピールする所以ではないか・・・と思っているが、たとえばウィルコ流クラウト・ロック「Spiders」のようにあからさまなアプローチを排した「SBS」のスムーズさと明朗さ/シンガー・ソングライター的アプローチは、たとえば若いピッチフォーク読者あたりには物足りないもの(ひいては後退)と映るかもしれない。だが、ジェフ・トゥーディーはすごく天邪鬼な人だと思っているので、このファンを試すような作品で、もしかしたら人気が高くなりすぎたウィルコ(前作でグラミー賞まで獲ってしまったしね)から余分な「ガス」を抜きたいのでは?とも思う。

そう考えると、(音楽そのものはこれまででもっとも穏やかながら)ウィルコのハードコアなアート主義は「SBS」でも健在と言える。ATP初登板となった今回のステージも、キャリア史上もっともパワフルなラインナップを揃える現在の彼らの、一種鬼気迫るライヴ・ケミストリーが圧倒的だった。新作の1曲目「Either Way」、CSN&Yばりのコーラス・ワークを聴かせる「You Are My Fece」で軽いウォーム・アップが完了し(しかし音響は完璧)、続く「I Am Trying To Break Your Heart」でギター3本の威力が早くも爆発。うご~~っ! カオスと整合の狭間で平衡感覚がかき乱されるこのトラックは、ライヴで聴くと格別です(脱臼感ともいう)。そこから「Shot In The Arm」に繋ぐ流れはライヴ盤「Kicking Television」同様で(はい、これ読みながらあのアルバムをCDプレイヤーにポン!してください!でもイギリス人はコーラスで合唱しねーぞ、ちきしょう)、スペイシーなのにオーガニックというウィルコの奇跡にトバされる。こういう曲を成り立たせているのがパット・サンソン(主にキーボード)とネルス・クライン(ジャズ・アヴァンギャルド畑の人)のストロングな存在で、特にネルスの精度とパワーは、ロックしか弾いたことのないギタリストには絶対出せない味。プログレ(っていうかメタルですらある)並みに凝ったソロやラップ・スティール技が繰り出されるたび盛り上がるし、ジェフとのツイン・ギターで生み出す和音も実にタイト。ジェフひとりのアコギ・パフォーマンスでもウィルコの曲は充分聴かせるのだが、これだけのプレイヤー(つい忘れがちだけど、グレン・コッチェのドラミングも天才的)を並べたバンドで全員が好き勝手に自己主張を始めたら、それはただの無軌道なジャムになってしまう。ミュージシャンとしての有り余るイマジネーションを、しかし「ウィルコ」という器の中に凝縮し、収めること。この密度とバランスを見極めようとする緊張感が、ウィルコを観るたび深い感慨に襲われる要因なのだろう。
だからだろうか、この日のライヴはやや肩に力が入りすぎた感もあった。イギリスにおける新作リリース直後のお披露目ライヴなだけにまだ試運転な部分もあったのだろうが、「Via Chicago」「At Least That’s What You Said」の緻密さ、「Poor Places」~「Spiders」とリレーする流れなど、迫力がすごすぎてちょっと立ち入る隙がない。「Heavy Metal Drummer」のような盛り上げ曲をプレイしなかったのもその印象を強めていたし、ウィルコ・ファンとの熱いインタラクションも含めたトータル性という意味では、「感動」とまではいかなかった。他のバンドが目当てのオーディエンスが混じるフェスで、好きなバンドを観る時のさだめでもあるのだけど。
ともあれ、ツアーを経て新作からの曲がどう生まれ変わるか、次回の公演は必見!と思ったし、ジェフ・トウィーディーがますます頑固親父化しているのが嬉しかった。時差ぼけから来る不調を嘆き、野次を飛ばすうざいアメリカ人観客を「アメリカ人だからって得意になるな~!」と一蹴する姿は、単なる不機嫌なおとっつぁん(笑)。今の世の中の色んなことが気に食わず、それを隠すことなくおおっぴらに表明していくこの人は、ジャック・ホワイトみたいに色んな人とぶつかり続けたのだろうし、誤解され、煙たがられることも多そう。水に流せない人ならではの、難儀な人生である。そんな彼が「この青い青い空があれば/今の腐った時代もそんなに悪いもんじゃないと思える/死にさえしなければ御の字/生き残れた/とりあえず今はそれで充分だ」(「Sky Blue Sky」)と歌えるようになったことを、筆者は本当に良かったなと思っている。


Shellac, The Go! Team, Okkervil River, Cornelius, The Apples In Stereo, The Books

19May2007 All Tomorrow’s Parties Week2(ATP vs YOU the Fans)

シェラック第1回
ピンクのミニスカが可愛いニンジャ
万華鏡アップルズ・ポップ健在

ATP2日目は、14時というフェスとしてはかなり早い時間にメイン・ステージに登場するシェラックでキック・オフだ~。「フェスだからって酒ばっか飲んでグタグタしてないで、早起きして俺達を観に来いオラァ!」ってこと? 相変らず客を甘やかさないスパルタな人達だなあ(素敵)・・・と気合を入れて会場に向かったところ、開演がかなり遅れてずっこけてしまった。
とはいえ彼らが出演するほぼ唯一のフェスだけあって、大入りで待つATP客の雰囲気は萎えることなく「これだけは観ておかないと!」と熱いままだったし、登場した3人はたちまち大喝采に包まれる。新作「Excellent Italian Greyhound」からは5、6曲プレイされたが――熾烈でハードボイルド、贅肉ゼロの硬いサウンドは字義通りのヘヴィ・メタル!生で観たことはもちろんないけど、レッド・ツェッペリンのライヴってこんな感じだったのかもしれない、とすら思うすさまじいカタルシス。ヨ・ラ・テンゴで不満だった音響問題も完全に解消されていたし(筆者がこれまで観たシェラックのライヴ、PAは毎回完璧過ぎるほど完璧。アルビニ先生なので当たり前だが)、テンションの高い演奏に周囲のオーディエンス(男)も「ギャオウゥゥ~」とか叫びながらクレイジーな反応を見せている。このメイン・ステージはドーム型白天井で雰囲気もへったくれもない人工的な空間/その上まだ昼間で明るく、照明効果もないに等しい、いわば「むき出し」な環境だったが、音だけで組み伏せるシェラックには、逆にその殺伐とした光景が似合っていた。

しかし、急遽決まったダニエル・ジョンストンのライヴ(たぶん観客のリクエストが多かったのだろう)を観るため移動し、ブロークンなペーソスを再度噛み締めた後、アニュアルズのビーチ・ボーイズ的美ポップにちょこっと和む。セカンドからの新曲を期待しつつゴー!チームを観にメイン・ステージに向かったところ、かかか可哀相なくらい客が入っていない。シェラックの後に出るのは誰でも分が悪いし、だからこそ主催者側も完全にカラーの異なるゴー!チームをスケジューリングしたのだろうけど、ATP客の「アンチ・コマーシャル・ポップ」志向をモロに受けた形。それでもめげないニンジャは相変らず元気に場を盛り立てようとしていたし、ヤケ気味(?)にブチ切れたイアンの妙なエネルギーと相まって、プチ爆発を生んでいたのは痛快。前作の路線を踏襲した新曲は、しっかりヒットしそうです。セカンド・ステージに向かうバトルズ目当ての長~い行列を尻目に、第三ステージへ!いざオッカーヴィル・リヴァー!哀感のあるカントリー調フォークが泣かせるいいバンドで、今回はウィル(いい声なんだよね、この人)の弾き語りで渋いスタートだわ・・・としみじみしていたら、2曲目で一気にスプリングスティーンばりに熱いアメリカン・ロックに突入。バンカラな演奏ながら各人の音は息が合っていて、逞しいライヴ・バンドに成長していて驚いた。しかし最後まで観ているとウィルコを前方で観れないので、しぶしぶ退場。
ウィルコに続いて登場したパティ・スミスは、1曲目「Gloria」にやはりノック・アウトされる。何度聴いても素晴らしいロックンロール・ソングだが、クレツィマー風アレンジの曲なども飛び出して奥深い演奏はさすがだ(後半にニルヴァーナなどカヴァーもプレイしたらしい)。ゴーストと並び、今回の日本代表だったお久しぶりコーネリアスはステージ設営に時間がかかっていたが、それも納得ですな!のロイヤル・フラッシュ・オーディオ・ヴィジュアル攻撃が始まり、その途端、場内は騒然。センサス・シンクロナイズドというライヴのテーマ通り、映像・音・光が完璧なタイミングと塩梅でリミックスされていて、なおかつライヴ・バンドとしての醍醐味も保持。どんどん加速し抽象度を増していく純粋なポップネスに、大喝采が湧き起こっていた。

そのコーネリアスも昔ファンだった(であろう)アップルズ・イン・ステレオは、イライジャ・ウッドの趣味レーベルから久々の新作「New Magnetic Wonder」をリリース、勢いに乗ってるロバート始めバンドの活気がそのまま反映された、やたらポジティヴなレインボー・ポップ大会を繰り広げてくれた。ビートルズやキンクスら、60年代の甘さをたっぷり吸い込んだ愛くるしいメロディ、トランペットやキーボードが飛び交う転がるようなサウンド。邪気のない快楽にオーディエンスも盛り上がっていたが、イケイケ曲の連打でさすがにビートが単調に感じられるようになってきたので、20分ほど観て東海岸の(おとなしいマトモス?)ことエレクトロニカ・デュオ=ザ・ブックスに移動。前のコーネリアスのヴィジュアル洪水にメンバーも圧倒されたらしく、「まじ凄かったよね!それに較べて僕達は・・・タハハ(苦笑)」とコーネリ同様スクリーン映像を使う自らのショウ構成にやや引け目を感じていたようだったけど、ローファイな映像とチェロ&ギターが織り成す澄んだ音世界は、都市の雑音を抜けて森の中にさまよいこんだような、静かな美しいひと時を心に生み出してくれた。ハイテクの突端を行くコーネリアスとオーガニックを洗練させたザ・ブックスと、対照的なポップを目の当たりにして感覚はすっかり覚醒。本日のオーラス、イードンへの準備はばっちりだ!イェイ!


Sparklehorse

18May2007 All Tomorrow’s Parties(ATP vs Fans)

スパークルホースの小宇宙

本国アメリカよりも、欧州での人気の方が高い気がするスパークルホース。壊れたはずのオルゴールが突如動き始め、子守唄を響かせる――そんな懐かしくも親しみやすいメロディをカタコト鳴らす繊細な音作りのバンド(と言っても、実質はマーク・リンカスのソロ・ユニットだが)だけにそれも不思議はないかもしれないが、彼らのATPデビュー・ギグはフェスだからといっていたずらに客受けを狙うこともない、アーティスティックな姿勢に貫かれたものだった。「静かなライヴなので、ラウドなのが好きな方はモグワイへどうぞ(苦笑)」とマーク自身冒頭で警告していたが、なるほどセッティングはキーボード、エフェクター、ギターのみで、ドラムは無し。選曲もファースト~セカンドからの楽曲が主体で(デンジャーマウスやデイヴ・フリッドマン参加の最新作「Dreamt For~」からは3曲のみ)、エレクトリックではあるものの微細な音が囁き合いながら、「Saturday」「Painbird」「Hundreds of Sparrows」など昔なじみの楽曲に「スパークルホース・アンプラグド」でも言いたい新しい表情とアレンジを付け加えていた。また、1曲ごとにアニメーションや実写などオリジナル・イメージ映像が後方スクリーンに映し出され、音と映像のハーモニーを生み出していく様も、映像喚起力豊かな彼らの音楽性にはぴったりだった。
それだけに、恐らく筆者のようにしつこく追ってきたファン以外には、ちょっと敷居の高いライヴだったのかな・・・とは思う。たとえば今年2月に彼らを観た時は、代表曲(といってもヒット・ソングなんて無いも同然のバンドなんですが)「Someday I Will Treat You Good」「Rainmaker」といったアップ・テンポ&ロッキンなポップ・チューンの存在が流れにメリハリを付けていたし、その時の5人編成=フル・バンドとはまったく異なる顔ぶれ(マーク+2名)だった今回は、ライヴ・エンターテインメントというより、むしろアート・インスタレーションのように作家性を感じさせるもの。その引いたパフォーマンスを、「食い足りない」「気取ってる」と見る人間もいたけれど、マーク・リンカスはライヴの間中ずっと、穏やかな微笑みを浮かべていた。昨年新作を発表するまでの5年間、この人は一時的に欝に見舞われ、スランプに陥っていたという。ひとつひとつの音を慈しむように演奏する姿が印象的だったこの日の姿は、トンネルを抜け出しつつある彼が、ミューズ(詩神)と再びチャンネルし始めた喜びを静かに噛み締めている――そんな風に、筆者の目にはちょっとまぶしく映った。


The Thermals, Daniel Johnston, Yo La Tengo, Mogwai, Akron/Family

18May2007 All Tmorrow's Parties (ATP vs Fans)

今フェス最多登場賞のダニエル
宇宙空母ギャラクティカ?(モグワイ)
元気印サーマルちゃん!
ラヴ&ピースなアクロン一家

会場に到着、初日トップ・バッターを飾るサブ・ポップのはっちゃきポートランド・パンカーことザ・サーマルズのステージに向かう。観客もまだ二日酔いに苦しみ始める前で元気が良く、一番手が盛り上がるのはフェスの常・・・としても、センター・ステージは盛況。ブレンダン・キャンティがプロデュースした目下の最新作「The Body,The Blood,The Machine」からの楽曲も小気味好くヒットしていき、バズコックス~初期グリーン・デイを思わせるスリー・コード・ポップのつるべ打ちにすっかり筋肉がほぐれました。ありがとう~!そのまま、同ステージに続いて登場するダニエル・ジョンストンを待つ。前回=ダーティ・スリー時はニック・ケイヴ目当てのオールド・ファンも結構目に付いたものだったが、今回の客層はそれに較べ若い。「ほんとにダニエル来るのかな?」「初めて観れる~」ときゃいきゃい騒いでいる娘さん達がかわいいなあ・・・なんて思っているところに、楽譜台とギターを手にダニエル登場!ひときわ熱~い喝采が送られたのは言うまでもなく(涙)、ストリングスに張り付いた拳でがしがしコードをこするような、あの独特なスタイルの弾き語りが始まる。知人のひとりが「なんじゃこれ?音楽か?」と顔をしかめていたくらい演奏は稚拙だが、飾り立てることない言葉が歌う普遍的な思いの数々は、それを音楽の形で「誰か」に届けずにいられないダニエル・ジョンストンという人の情熱と共に、胸にぐんぐん刺さってくる。「Devil Town」で締めたセットは、筆者が今まで観た中でもっとも長い10曲以上、ギターとピアノ両方で歌ってくれたし、体調が安定しているみたい・・・と安心。マーク・リンカスがどこかで顔を出すか?と期待してもいたけど、自分のバイオリズムがそのままリズムになってるこの人の弾き語りで、誰かがバックを努める(=リズム・キープする)のは無理な話だなあ~と途中で思った。
お次は待ってました!ヨ・ラ・テンゴ!というわけでメインのパヴィリオン・ステージに向かうと、これまたかなりの人込み。この晩のメインはヨラ、そして続くヘッドライン=モグワイ(フジ・ロックのホワイト・ステージみたいだな~)のみの2ステージで、グワイ・ファンが早くも集まり始めている模様。ジャジィなオープニングが音響ぽくて渋いねヨラ――と言いたいところだが、うおぉぉぉPA悪い!エコーがひどい。サウンドが波状に揺れて文字通りユ・ラ・テンゴ、なんてシャレにもなりませんやな。ほぼ1曲ごとにアイラがギター、キーボードと楽器を変えるのでミキシングも大変な上に、どでかいドーム型空間なのもPAスタッフにはハンデだったんだろうけど、せっかくの繊細な音の営み~インストのインタラクションを心行くまで堪能できないのは心惜しい。しかし、ポップな楽曲が混じることで尻上がりに調子は良くなっていき、いつものグルーヴ感に火が着いてオーディエンスもノリノリ。ラストにはダニエル・ジョンストンが迎えられ、「Speeding Motorcycle」共演でトドメだあ!場内にぽっかり巨大なハート・マークが浮かぶのが見えるほど、スウィートな光景でした。
嗚呼!モグワイの真裏がスパークルホースってのは誰の陰謀?というわけで、チーム・グラスゴーはラスト20分ほどしか観れませんでしたが、ステージから押し寄せる「未知との遭遇」状態なライティングと音の洪水は圧巻で、ヘッドラインにふさわしい盛り上がりを生んでいたのはさすが。ニューヨーク発トール・ファースが想像以上にかっこいいインプロ系フリー・ロックの火花を散らせる姿をしばし観戦した後、ヤング・ゴッドからのリリース群に接して以来ライヴを非常に楽しみにしていた(でも、なぜかいつもタイミングが合わなかった)アクロン/ファミリーに移動。脳開放:神秘のサイケ・カクテルを期待しながらワクワク(アクアク?)していたところ、東洋的な和音を聴かせる3部コーラスの冒頭こそ「おおっ!」と思わせたものの、2曲目で早くもメンバー全員が人間タイコ状態(スティックを手にとにかくなんでも叩く)に突入、コール・アンド・レスポンスを煽るなど明るい雰囲気は、ドゥンイェン(Dungen)というよりむしろザ・ホールド・ステディを思わせる(!)ポジなコミュニティ・ムード。もうちょっとドロドロしたものを期待していたんだけども、プログレ版CSN&Yとでも言うべき風変わりな世界は楽しめた。そのまま、ユースムーヴィーズ、ホワイ?に流れたいところだったが、土日が過酷なのでこの日は早めに切り上げることに。


Nick Cave/Grinderman

29April07 All Tomorrow’s Parties(Dirty Three)

ピアノ教師から始まって・・・
月夜に触れて狼男=グラインダーマンに変貌(?!)
見えにくいですが、右から2人目、ボビー

High Priest of Gloom Did Ecstatic Noise

ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズにとって目下のところの最新作である「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」(04年)作曲セッション中にバンドを4人(ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス、マーティン・ケイシー、ジム・スクラヴナス)にまでスケール・ダウンし、常以上にフレキシブルなジャムを始めたことから種が蒔かれた・・・という新ユニット:グラインダーマン。「ザ・バースデー・パーティー時代のブルータルなパンク・サウンドに戻ったらしい」との前評判&興奮の中ドロップされたファースト・アルバム「Grinderman」は――
(バンド名どおり)ダーティで獰猛なお子様立ち入り禁止ゾーン!
ユーモラスでフリーキーな不良オヤジっぷり全開!
ストゥージズばりのメタリックな高電圧&ドアーズを思わせる異端なサイケデリアで卍固めする男気ガレージ・ブルースの傑作!
というわけで、今や3児の良きパパ(49歳)/オルタナ界を代表する一流ソングライターとして高く評価され、またプレミア・バラード・シンガーの認知もすっかり定着した感のあるニック・ケイヴだったが、落ち着くのはまだ早い、ということらしい。マーク・E・スミスといいジャーヴィスといい、筋の通った大人が本気出して暴れる姿には、痺れますね(「ちょい悪」とか言って、半端に色気づいてるプチブル・オヤジにはムカムカさせられるだけですが)。
そのグラインダーマンの初デビュー・ギグがこのATPでのステージだったわけだけど、小さなクラブでファンを集めて試運転シークレット・ギグ・・・といった小出し戦法ではなく、いきなり5000人近いオーディエンスを相手に派手にブチかますところが、さすが30年以上のキャリアを誇るキング・オブ・ダークネス。初日(土曜)を終えた翌日行なわれた合同記者会見では「(プレイする前まで)非常に緊張したし、プレッシャーが募っていた。他のアクトの素晴らしいプレイもたくさん観たから、尚更そう感じたね」とコメントしていたけれど、今回のライヴは①ソロ→(30分休憩)→②グラインダーマンと続く濃~い「ニック祭りスペシャル」(寿司屋の「ウニづくしコース」みたいなもん?)で、実質同じバンドが続けてプレイすることになる。バッド・シーズのバンドとしての地力をもってすれば緊張も初日でほぐれたに違いないし、筆者がフルで観たこの2回目のギグは実際爆裂モノだった。

まず前半、ニック・ケイヴのソロ・セット。比較的年配の客も目立つATPだったが、かつてパンク~ゴス・キッズだった(であろう)彼らにとって今もCOOL AS FUCKでノーブルな成熟を遂げているニック・ケイヴのあり方は憧れ/理想なのだろう、MEN IN BLACKが登場するや割れるような喝采が巻き起こり、Into My Arms(「Boatman’s Call」収録)から闇の祝祭が厳かにスタート。グランド・ピアノを弾き語りするニック・ケイヴの歌声を中心に、バッド・シーズの3人が抑制の効いたアンサンブル(ウォーレン・エリスのヴァイオリンの物悲しさがしみました)を奏でる様が美しい。「同じオーディエンスを相手に2回プレイするのは、妙なもんだな!」とのコメントで笑いが起き、ほぐれたファン側からリクエストの矢が無数にステージに放たれる。ソロ・デビューから24年、フル・アルバム13作だけあって持ち歌の数も半端じゃないアーティストだが、聞き取れたリクエストを「うーん、あの曲か。そうねえ・・・」など、もったいぶった表情で対応・検討するニック・ケイヴの姿(コミカルですらある)~一挙一動にファンは大喜び。その司祭ぶりは文字通りカリスマで、Deannaのむせかえるような色気とポップネスが生み出す歓喜のうねり、The Lyre of Orpheusの♪Oh,Mama大合唱(ニック本人もその熱いリアクションに苦笑気味)、サウンドの厚さが鳥肌ものの素晴らしさだったTupero、ギターを掻き鳴らし、時にステージ端に(文字通り)飛び出してオーディエンスを威嚇する様まで、キングの独壇場だった。「バッド・シーズと演奏する時は、フロント・マンとしての責任に神経が昂ぶっていて、それでああいう風にやたらと動き回ってしまうんだ」と記者会見時に話していたが、(それが半分冗談としても)張り詰めた弦がピシピシしなるようにテンションが高いパフォーマンスは、馴れ合いやルーティーンとは無縁:毎回真剣勝負のライヴをこの人がやっていることの証しだと思う。彼のライヴがイギリスでは毎回ソールド・アウトし、リピーターが尽きないのも、そのせいなのだろう。
セットはバラエティに富んでいたものの、Right Now I’m A-Roaming、Love Letterなど、穏やかで繊細な情感で照らす曲がハイライトの瞬間を生み出していた。そうしたロマンティックなバラードに対する女性ファンの受け方は半端じゃなかったし、話術とラヴ・ソングで女を口説く酒場のピアノ・マンめいた雰囲気すら、たまに感じるほど(妙な比較だが、この人のライヴにはどこか新宿コマ劇場の座長公演的ムードがある。おひねりが飛んでもおかしくない、あのどこかじっとりした熱気ね)。しかし、ブルースやフォークをベースにした無駄のない楽曲とニック・ケイヴの深い歌声、バッド・シーズのタイトな演奏が、瀬戸際で甘ったるさや感傷に陥るのを回避していた。酸いも甘いもかみ分けた、大人のバランスである。痺れますね。

ソロ・セットのトーンを規定していたのがステージ中央を占めるグランド・ピアノの重厚な存在感だったとすれば、代わってキーボードやミニ・パーカッションが運び込まれ、一気に見晴らしが良くなったステージに舞い降りたグラインダーマンのトーンは動であり、エレクトリシティであり、爆発だった。アルバムのジャケットと同じオレンジ&グリーンのスリージーで毒々しい照明が点り、ピンクのスーツに衣替えしたジム・スクラヴナス(グラインダーマンでの彼の定番衣装らしい)の姿が視界に入るや、オーディエンスがぐぉぉぉぉと沸く。間髪入れずにキック・オフされた1曲目はもちろんGet It On、リズム・ギターを弾きまくるニックといい(ソロではピアノがメイン楽器なので、彼のギター・プレイは珍しい)蛮人と化したウォーレン・エリスの咆哮といい、しょっぱなからウルトラ・グラインド、全開である。アルバム「Grinderman」は作りそのものがライヴ的であり、それだけバンドのパフォーマンス力が高い(全員の集中力が研ぎ澄まされていないと、あんなに密度の濃いアルバムは1週間では作れないだろう)ということだと承知してはいたが、生の爆音で聴く迫力・肌にびりびり伝わるエネルギー波は段違いである。気持ち良すぎっ!
パーカッション&コーラスでゲスト参加のボビー・ギレスピーが紹介され、若いファンから「ボビ~~!」と歓声がちらほら湧いたが、彼の存在は正直場違いに感じた(本人もニック・ケイヴのハードコア・ファンからの反感を感じ取っていたのか、終始マーティン・ケイシーの腰巾着状態で演奏に没頭。先生の後ろに隠れていじめっ子を避けようとする転校生みたいにおとなしかったです)。彼の参加の経緯を「ボビーはアルバムを即気に入ってくれたし、『最高だから自分にも何かやらせてくれ!』としつこく頼まれて」(ウォーレン・エリス)「グラインダーマンのライヴではパーカッショニストは必須だからね。それに、彼はロックンロールの大ファンだし」(ニック・ケイヴ)と説明していたが、基本的に「非常にセンスのいいロックンロール・イタコ」「優れた歴史家/鼻の利く解釈者」(それはそれで才能ですけど)であり、「ロックンローラー」ではないボビー・ギレスピーのような人が、侍の集団であるグラインダーマンの中にいることに違和感を覚えずにいられなかった。もちろん、「Riot City Blues」でウォーレン・エリスを起用したことからも、ボビーのニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズに対する愛情が本物である点に疑問の余地はないし、友情から生まれたスペシャル・コラボだとは分かっている。筆者のみみっちい不平を、ウォーレン・エリスならさしずめ「ケツの青いインディ純粋主義者の青臭い批判。相手にしてられっか!」と一蹴するだろう(「グラインダーマンでは、誰に何を言われようが自分達の意見を通す」と言っていたしね)。
しかし、クスリで飛んだ状態でヘナヘナとマラカスを振り、頼りない声でコーラスをつける(彼の細い声が混じるたび、「スワッスティッカラーイ・ティカ~」のフレーズが頭に甦ってきて参りました)――要するに、おなじみ「プライマルのボビー」をやる以外に持ち技のない彼が、グラインダーマンというソリッドな結合体にエクストラな要素や化学反応をもちきたらすことなく、まるで好きなバンドのリハーサル・スタジオに招かれてはしゃぐファンのようにステージに立って浮かれる様は、見ていて恥ずかしくなるくらいだった。たとえば、あれがジャック・ホワイトやPJハーヴェイだったら、グラインダーマンの前にひれ伏すだけではなく触発され、火花を散らすようなバトルを挑んでいたんじゃないだろうか?まあ、ボビーという人は永遠に「ファン」型ミュージシャンなので仕方ないけど(クランプスのラックス・インテリアにちなんで、自分の子供をLUXと名づけるくらいだしなあ)、20年以上前にJAMCでやったことをいまだにやっているのか彼は・・・と思うと、ちょっとげんなりしてしまった。

と、こざかしい観察を試みてはみたものの、ノイズと異形の叫び、パーカッションを何層にも重ねたうねるビート、不協和音(ウォーレン・エリスのディストーション・ヴァイオリンが絶品!)のアマルガムを情け容赦なく叩きつけてくるグラインダーマンの迫力には敵いません。アップ・テンポでがんがん押すDepth Charge Ethel、Honey Beeといったエレクトリック・ガレージ・ロックンロールは、演奏している本人達も楽しくて仕方ないようだったし(「Fun House」ばりに暴れん坊な音、出してて相当カタルシスだろう)、右手でキーボード、左手でマイク・スタンドを鷲づかみ、歌い舞うニック・ケイヴのパフォーマンスもサウンドに比例して強(狂)度を増していく。テンションと客の盛り上がりはブルース・マンの男泣きが逆噴射するNo Pussy Bluesで最高潮に達したが(ニック先生、腰、振り過ぎ)、ボディ・ブローのように後を引くGrinderman、Man In The Moonが描き出す妖気~呪術的ブルース(ドアーズ「Live in Hollywood」を思い出した)も、一見無軌道にブチかましているように見えて緻密で凝ったグラインダーマンの演奏・アレンジの深さを物語っていて素晴らしかった。アンコールをペーソスと苦味が絶妙なGo Tell The Womanで軽やかに締め、黙示録の四騎士による異形のパレードは終わりを告げた。この後もTara Jane O’Neil(サウンドは静かながら、音の絡み方はグラインダーマンばりに濃い。傑出した才能です)、Mum Smokes(めっけもんポップ・バンドその②。インディ版タイニー・ティム?)、Secretary(バリトン・サックスで圧倒した女性アヴァンギャルド・サキソフォニスト。実にニューヨーク的でかっこよかった)と良いライヴが続き、心から満足しました。


Cat Power & Dirty Delta Blues

29April07 All Tomorrow’s Parties(Dirty Three)

生まれ変わったキャット・パワー

This Cat Has Claws

メアリー・マーガレット・オハラに泣かされた後、気を取り直してメイン・ステージへ。シルヴァー・マウント・ザイオン・オーケストラのギャラクティックな演奏をしばし堪能していたところ、振り返ればメインからセカンド・ステージへの通路にすさまじい長蛇の列!ジョアンナ・ニューサム、圧勝である。ATPが現在の会場=マインヘッドに開催地を移動して今回が2度目になるが、サーストン・ムーアがキュレーターを務めた前回、ファンの間で不評を買ったのが、ディアフーフ、メルヴィンズ、ダイナソー・ジュニアなどで起きた入場規制。それもあって、今回からメイン・ステージをパヴィリオン・エリアに設営し、1回目メインだったセンター・ステージはセカンド・ステージに、また人気アクトは2度演奏するという配慮がなされたわけだが、それでもカオスが生まれるほど、ジョアンナ目当ては多かったよう(友人の半分も、列の長さに途中放棄していた。根性ねえなあ)。筆者も観たかったし、ジョアンナ(とホワイト・マジック)に挟まれて出演するビル・キャラハンはものすごぉぉく観たかったのだが、今年1月バービカン・センターでジョアンナのオケ付きは観に行ったし(絶品でした)、デュエットで1曲参加したビル(ダンディでした)も、その際観れたし・・・と思い返し、ここは諦めてキャット・パワー、続くニック・ケイヴに専念することに。そのキャット・パワーは、新バンド=ダーティ・デルタ・ブルースを伴って、新たな表情を披露。その生まれ変わりぶりにファンは度肝を抜かされていたし、筆者の知人8割は「良くなかった!」と手厳しい感想を漏らすほど。恐らく、あの週末中もっとも賛否両論分かれたパフォーマンスだったと思う。

ダーティ・デルタ・ブルースは、「ダーティ」・スリーのジム・ホワイト(Ds)、元「デルタ」72のグレッグ・フォアマン(Keys)、「ブルース」・エクスプロージョンのジュダ・バウアー(G。というか、このバンドでの彼のプレイは20マイルズに近い)から成るトリオ(ベーシストが誰かは分かりませんでした、すみません)。ジュダは相変らず男前♪などと思いつつセッティングの様子を見守っていたのだが、舞台袖にペネロペ・クルズばりの美女が見え隠れしているのに気づいた。誰?といぶかしく思っていたら・・・前髪をアップにしたポニーテールにタイトなジーンズも若々しく、ドリンク(咽喉用の特製ドリンクだろう)の入った容器を大事そうに抱えるショーン・マーシャル本人(!)。まじー?! レコード会社の知人も「ショーン、お酒をやめて以来調子いいみたいです」と言ってたけど、(オフはともかく)ステージ上でこんなに元気そうな彼女を観るのは初めて。もっとも、アルコール中毒を克服して以降、昨年のツアーでは力強い姿を見せ始めていたというから、筆者が(UK公演は見逃しました)気付かないうちに彼女の内面は変化していたのだろう。
The Greatestから始まったセットは、サウンド的には最新作「The Greatest」のレイドバックなカントリー・ソウル~スワンプ・ロック路線を踏襲していたものの、舞台端にまで出てきてオーディエンスとアイ・コンタクトを交わし笑顔を浮かべ、ジェスチャー混じりで(時に腕を突き上げることも)エモーショナルに歌い上げながらショウをコンダクトしていく「バンマス:ショーン・マーシャル」の姿には、終始驚かされっぱなしだった。DDBのプレイはまだバンドとして充分にケミストリーが花開いているとは言いがたかったし(せっかくのエレピ・サウンドもあまり活きてなかったし、ジュダの手馴れたリフとジム・ホワイトが引っ張っている感)、ショーンのステージ・アクションも素朴でたまにぎこちなかったりする。ジタンの箱をポケットから取り出し紫煙をたなびかせる仕草など、(いくらシャネルからお声がかかたっとはいえ)ちょっとキザなクリシェにはまってませんか?と突っ込みたくなる場面もあった。しかし、ニック・ケイヴの圧倒的なフロント・マンぶりに感化されたのか(?)、プレスリーやアリーサ・フランクリン、メアリー・J・ブライジといった敬愛するカリスマのプレゼンスを彼女なりにトレースしたかのような「打って出る」パフォーマンスは、キャット・パワーに付きまとってきた「ニューロティックな歌姫」「極度のライヴ恐怖症と自己不信でまともに歌えない業の深いシンガー」像を突き崩してあまりある、リフレッシングなものだった。
Lived in Bars、Could Weなど最新作収録曲を中心にしたセットは、ヴォーカルこそ丁寧に聴かせてくれたものの、ディテールにこだわるよりもノリを重視したざっくばらんな演奏と共に、どんどん進んでいった。アル・クーパー的タッチを聴かせたストーンズのSatisfactionではショーンが70年代ミックのダンスを真似るおどけた場面も登場し、テンポを落として南部っぽさを増したナールズ・バークリーCrazyのカヴァーにオーディエンスは更にびっくり。原曲をすっかり自分のものにしてしまうこの人のカヴァー・センスはパティ・スミス並みにすごいし、現在DDBの面々とカヴァーズ・レコード第2弾を制作中(年内にリリースされる見込み)というから、もしかしたらこのCrazyも収録されるかもしれませんな(今回はヒップホップやソウルといった意外な選曲が飛び出すかも?)。メンバー紹介を含む、ソウル・レヴュー風ジャムで幕切れ・・・と書くとかっこいいが、実際はそこまでちゃんとした「型」を感じさせるものではなく、アドリブでアウトロを延ばしてそれっぽいフィニッシュに持っていった、というところ。本人もまだ照れくさそうだったし、試作段階のライヴをとりあえず持ってきた、という印象のパフォーマンスではあった。しかし、この新たな方向性から何が生まれるか、楽しみだし興味深い。

今回のライヴにNOを表明した知人(男性)は、「プロフェッショナルでそつがなくて、ソウルが感じられない」と評していた。演奏を中断したり投げ出すことなく、いいライヴを誠実にやろうと努力することの何が悪い?と筆者が問うと、「昔のキャット・パワーには、リアルな苦悩と絶望があった。それが彼女にエッジを与えていたし、ステージで傷つきやすさを曝け出してしまうところが人間的だった」という答えが返ってきた。それはそれで一理あるけれど、じゃあSuffer To Create、いい音楽を作るために彼女は苦しみ続けなければならないってこと?・・・と感じて、ちょっと憤然としてしまった。キャット・パワーという人は矛盾も多いし、発言や行動にブレもあったりする。要するに完璧じゃない=人間ってことだけど、筆者がこれまで雑誌取材の場で何度か触れてきた素顔は、クラシックで天然な感性(母性の大らかさと慈愛)と繊細さを併せ持つ、実にフェミニンな女性のそれだった。だからこそ彼女の作品には一見脆弱に見えて揺るがない芯の強さがあるのだと思うし、ムラのあるライヴでその点が見えにくくなり、誤解されてしまうのは悔しくもあった。
「お客が自分のプレイを観に来るとは思えない」と漏らし、自己蔑視・嫌悪に苛まれてきた彼女は、重く目にかかり表情を隠してきた前髪を振り払い、今や観客の目を見てコミュニケートしようとしている――その勇気は讃えるべきだと思うし、何より、オープンな彼女はハッピーでパワフルな女性に見えた。筆者の近くに立っていた、スペイン人の若い女の子ファンの一群がライヴ中ずっと盛り上がっていたのは、そんな彼女のビッグ・シスターぶりに勇気付けられたからだろう。そういえば、件の知人は「今日の彼女は化粧も濃かった」と、訳の分からないケチもつけていたけど(アイ・メイクこそスモーキーながら、小麦色に焼けた肌はナチュラルでした)。キャット・パワーを心のどこかで「守ってあげなくちゃいけない女性/支えが必要な素朴なチャイルド・ウーマン」とみなし、庇護者気分で愛でてきた男性ファンは、この日のショーンの凛々しく美しい佇まい・脱皮ぶりに引け目を感じたのかもしれない。女性が強くなると恐怖感を覚えずにいられない、器量の狭い男性ならではのリアクションのような気もしますが、どうでしょ・・・?


Mary Margaret O’Hara

29April07 All Tomorrow’s Parties(Dirty Three)

どこか、無邪気な童女のようでもありました

A Woman Under The Influence

メアリー・マーガレット・オハラのセットは、今回のATPにおいて、ある意味もっともハードコアなファンが集まったギグだったと言