というわけで、新作「Narrow Stairs」発売&サマーソニック再登板を祝し、デス・キャブ・フォー・キューティーを折に触れて(可能な限り)取り上げていこうと思います。先日のロンドン公演ライヴ・リポに続き、今回は「デスキャブ・サウンドの鍵を握る男」ことクリス・ウォラ(G/keys)のファースト・ソロ「Feild Manual」発表時の取材から、未公開部分=アウト・テイクをお届け。「Field~」がクランチーなギターがメインのアルバムになったのも納得!な、(意外にも)パワー・ポップ好きという素顔も垣間見えます。ちなみに、取材時レコーディング中だったデスキャブ新作については訊きませんでした・・・ソロ作取材なんだから、バンドの話を持ち出しちゃ失礼かなと自粛した次第。というわけで、USインディ・ロック界一の好青年(?)クリス・ウォラとのトークをどうぞ。
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――ソロのMP3音源はこれまでも折に触れて発表なさっていましたが、プロパーな「ソロ・アルバム」としてはこの「Field Manual」が初ですよね。これまでは「作品」を作るよりもむしろネットの即時性を活かしてサクッと音源を出していく、そのプロセスそのものをエンジョイしていた感じ?
その通り。それもあったし、僕のウェブ・サイト・・・ホール・オブ・ジャスティス・レコーディングのウェブ・サイトはかれこれ10、12年の間、僕が自分の好きな時に1、2曲、自分でも納得できる、世に出してもいいかなと思える音ができるたびちょこちょこアップロードする、そんな調子で気ままに続いてきたわけだよね。それが音源のバックログのすべてだったし、ウェブ・サイトのために特別に楽曲を書き下ろす、なんてこともなかった。発表された楽曲のほとんどは、放置されたままになってた楽曲なんだ(笑)、だから、ある意味棚の中にしまいこんでおいたままだった音源、とでもいうか。
――DCFCでのレコーディング&ツアー、他のアーティストのプロデュースなど常に多忙そうですが、いつご自分の音楽作りの時間を見つけているんですか?どういうシチュエーションで作るんでしょう?
この作品に入っている音楽の多くは・・・うち5曲は僕のスタジオでレコーディングが始まって、それ以外の楽曲はそのほとんどをカナダ:バンクーヴァーにあるウォーン・リブジー(※過去にミッドナイト・オイルなども手掛けたベテラン。共同プロデューサー)のスタジオでレコーディングしていったものなんだ。で、ポートランドで楽曲をまとめることになった時点ではほぼ出来上がっていたというか、まあ、それぞれ完成の度合いは曲によって異なっていたけど、ある程度形になっていた、という。カナダで最後の仕上げ部分を付け加えたりもしていたけど、ほぼレコーディングは終わっていて。でも、カナダで録音した音源のすべては、2週間半くらいで一気に録っていったものだね。
――ではあなたがギター1本でシンプルに宅録・・・というホーム・レコーディングだったわけではないんですね。
いや、でも、そうやって作り始めた曲も中にはあるよ。〝バード・オブ・ザ・ソング〟なんかは偶然出くわして録音したサウンドを使ったりしていてホーム・レコーディング的な作りの曲だし、アルバムの1曲目〝2:50〟はそういう風に始まったものの、そこから発展して違う形になっていった曲なんだ。でもそうだな、このアルバムに関して言えば、時間的にもレコーディングに使用した場所にしても、制作過程は凝縮されてたね。
――でも、もっと早い時期に完成・発表していても良かったんじゃないですか?最終的に予定されていた07年ではなく08年リリースになったわけですけど。
(苦笑)うん、我ながら笑っちゃうんだけど、ファイナル音源のマスターに僕がOKを出したのは、たった2日前なんだ。
――そうなんですか?
だから、今君に聴いてもらっている音源は、最終的に発売される作品とはほんのちょっと違うんだよね。リリースされる作品には4つの異なるミックスが収録されることになっているから。というのも、マスター音源を収めたハード・ディスクをカナダ国境で押収された事件のせいで、すべてのプロダクション作業がお釈迦になったんだ。ミキシングのために1週間だけスケジュールを空けておいたんだけど、プロモーション用にリリースしたヴァージョンに近いものにまで漕ぎ着けたものの、そこでファイルを押収されちゃったという。ほんとに大混乱だったし、ある意味今もその影響が続いてるっていう(苦笑)。そうだね、だから、いい感じで仕上がったとは言えないなあ、クフフフフ!
――(笑)。ベンのポスタル・サーヴィスのようにバンドでやっていることとは異なる、たとえば実験的でもっとアブストラクトな作風になるのかな・・・と想像していたんですが、基本的にはメロディックなポップ・ミュージックだし、ある意味DCFC以上に激しいギター・サウンドも含まれていますよね。このアルバムであなたがトライしたかった音楽的方向性はそもそもどういうものだったんでしょう?
そうだな、自分の「昼間の仕事」、(苦笑)要するにDCFCってことだけども、そこであまりやる機会のなかったことをやりたかった、という部分はまずあるよね。このアルバムにはがんがんロックしてる曲もあるし、そういう曲は僕達実際あんまりプレイしないし・・・面白いもんだよね、っていうのも、他のバンドの作品をプロデュースする時、僕はいつだってバンド側に対して「これといった特定のサウンドに執着しないように」って勧めるんだよ。僕のレコード・コレクションにしたってすごく幅が広いし、インディ・ロックを聴くのはもちろんありだけど、一方で70年代のイージー・リスニング・ミュージックが好きだったり、かと思えばヘヴィ・メタルも聴くしって調子で節操がないし、ほんと、そのふたつの間にあるものなら何でもOKなわけ。だから作っているうちに音楽がある方向に向かいそうだなって気がしたら、流れに任せてそこを可能な限り掘り下げていこう、という。とは言っても、ちょっとした基準はあったんだよ。過去10年間の自分にとって、メロディ、そしてソングライティングの構造って面に関してもっとも意義の大きい存在って、スーパードラッグなんだよね。覚えてる?
――はいもちろん。いいパワー・ポップ・バンドです。
うんうん。ジョン(・デイヴィス)のメロディって、本当にもう、素晴らしいよね。彼の書く曲の中には、びっくりするくらいすごいものがあるからさ。まあ、スーパードラッグがこれまでに1曲目からラストまで通して全曲最高ってくらい完成度の高いアルバムを作ったことがあるかって言われたら疑問だけど、それでも楽曲のほとんどは素晴らしいからなあ。それに近いことは、僕が本当に大好きなもうひとつのバンド、スローンにも当てはまると思うな。あと、サーマルズも好きだよ。彼らの曲の書き方とか、本当に好きなんだ。まあ、要は楽曲の提示の仕方ってことなんだろうけど、ああいうサウンドを持つ音楽が僕個人にとっての音楽を始める場所というか。僕としても、ああいう音楽なら自分の中に組み込んで消化できるし、その上でなんというか、自分独自の物として提示することができる音楽と思える、という。それがこの作品のスタート地点というか、ひとつの型みたいなものだったんだけど、それと同時にもうひとつあったのは、DCFCで僕がやってきたことのすべてもここに含まれるってことなんだよ。このアルバムの中にもいくつか「うーん、この曲をバンドでやったらどうなるだろう? デスキャブがこの曲をやったらどう聞こえる?」なんて感じるところがあるとか、そういう点だね。
――この作品の制作経験は、間違いなくデスキャブにとってプラスになるでしょうね。直接繋がりのある作品ではないにしろ、たとえば今回試して上手くいった点をDCFC作品に活かしたり、あなたがこういうアウトレットをバンド外に持っていることはDCFCを大きくすることになるんじゃないでしょうか。
そうだよね。でも、僕達のやるあらゆるサイド・プロジェクトの最終的な目標地点っていのも、詰まるところはそこだったりするんだよ。ニック(・ハーマー/DCFCのベーシスト)が以前こんなことを言ってたんだけど、僕達はめいめい砂場に遊びに繰り出しては、また戻ってきて他のキッズが砂のお城を作るのを手伝ってるようなものじゃないかって。
――(笑)今後もソロ作や他のアーティストのプロデュースをDCFCの合間に旺盛に続けていきたい、と。
そうだね、そうありたいと思ってる。
――どっちにせよお忙しいとは思うんですけど、ワーカホリック気味と感じることは?
(笑)まあ、何年か前に誰かにそう指摘されたら『違うよ~』って否定してたかもしれないけど、はっきり言って、今の自分はそれ以外の何者でもないと思う(笑)。自分でも認めるしかないみたいだね、僕は正真正銘の仕事人間だ!と。そこは疑問の余地なし。
――しかしミュージシャン人生の中でそういう風にクリエイティヴィティが高まる時期ってある程度限られているわけで、もっとトライしたい、もっと他のことをやってみたい、という一種のピーク期が来ているのかもしれないですね。
ああ、それは本当にそうだと思う。というのも、僕は今32歳だけど、できればあと何年かのうちに家庭を持ちたいと思っているし、そうなったら色んな物事が相当大きく変わるだろうからね。今みたいにはしょっちゅう曲を書けなくなるだろうし、今の自分が書いているようなタイプの曲も書かなくなると思う。そうだよね、自分でもそれは感じるな。ちょっと面白いんだけど、なんというかな、今のうちに詰め込めるだけ詰め込もう、そんな感覚があるんだよ。
――DCFCのメンバーはみんな大人で知性のある人達だから、うまくバンドとプライヴェートのバランスをとって、全員仲のいいファミリーになれると思いますよ。
うんうん、僕もそう思う。っていうか、ある意味楽しみなくらいなんだ。すごく楽しいだろうしね。
――ぜひDCFCで「子守唄アルバム」を作ってくださいよ!
(苦笑)それは笑えるだろうなあ・・・。
クリス・ウォラを脱兎チェック!
デス・キャブ・フォー・キューティーを脱兎チェック!
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