温故知新もたまには必要・・・とよく言われる。しかし、その傾向はいまやイギリスの音楽シーンの中で一種の疫病の域にまで達しているんじゃないだろうか。現在活躍中のイギリスのアーティストの大群が、影響やインスピレーション源として「クールだった」過去を頻繁に見詰めなおしている。しかし、彼らはもうひとつの重要なファクター―自分達自身―をそこに含めることを怠っているように思える。まあ、たぶん彼らは自分達自身の個性をそこに含めたつもりなんだろう。だが、その「個性」とやらはあまりに微量すぎて、違いを感じることができないのだ。ハイプ、バカげた音楽評、手っ取り早くセールスを上げられる作品をマーケティングすることにばかり気を取られている音楽業界・・・そうしたもののすべてが、過去の恩恵に属しながらその貧相なコピーを生み出し、しかし究極的には使い捨ての音楽ばかり作っている、そんなモダンなUK音楽シーンが存在する時代へと、我々を押しやっているのだ。
しかし、ここに紹介するイギリス生まれのヴォイス・オブ・ザ・セヴン・ウッズのセルフ・タイトルのデビュー・フル・アルバムは、誰もが注目して耳を傾けるべき、正真正銘素晴らしい、天才を感じさせるファースト・アルバムになっている。作品のトーンは、ライアーズの面々が手がけたという魔術めいたアルバムのスリーヴ・アート(ダークな内省を感じさせる)という見た目だけでも、まず決まりだろう。もちろん、この作品にだって「過去」の影はうじゃうじゃしている。ロビー・バショー風なラーガ・アコースティック・サウンド、ラヴを思わせるはみだし者のフォーク・ロック、アモン・デュール的コミューン・サイケデリア、ニック・ドレイクの憂鬱、などなど。しかし、「ミスター・セヴンウッズ」ことリック・トムリンソンは、このサウンドに彼自身のソウル/魂を流し込むことで、この作品にどんぴしゃな現代的雰囲気をもたらしている。彼は、フォーク・サイケを現代に伝え、コンテンポラリーなものとしてプレイできる一群のトップ級アーティスト、たとえばベン・チャズニー(シックス・オーガンズ・オブ・アドミッタンス)やコメッツ・オン・ファイア、あるいはアシッド・マザーズ・テンプルと肩を並べることのできる、本当の意味での最初のUK発アクトだと思う。
これまでにリリースされてきた限定盤EP群でVOTSWが聴かせた可能性は、この作品にすべて実現されているし、あの素晴らしいライヴ・ショウを一度でも体験したことのある人間なら、ソロ・パフォーマンスでのアコースティック味とフル・バンド・セットでの爆発、その双方がきちんとアルバムの中にリプリゼントされているのに気付くはずだ。まだまだギター・ヒーローというレベルには達していないものの、リック・トムリンソンはその面でも確実に成長している。それは、彼のフリー・スタイルでぼろぼろに擦り切れんばかりの、しかし徹頭徹尾複雑極まりないエレキ・パートを聴けば一目瞭然だろう。自主プロデュースぶりも、賞賛に値する―とりわけ、前述したカタルシスあふれるエレキ・ギターのパート、こうしたフリーク・アウト型ギター・サウンドにぴったりな、どろどろとくすんだ不透明なサウンドを与えているのは素晴らしい。
これは優れたデビュー作だし、圧倒的!とすら感じる場面も含まれている。「フォーク・サイケ」という自ら選んだジャンルの範疇とはいえ、これだけの広がり・幅を備えたアーティストであれば、リック・トムリンソンはこの作品を経て、今後いくつものルートの中から好きな道を選ぶことができるだろう。しかし、恐らくこの作品は現在のイギリスにおいては話題になることもなく消え、後に「過小評価された名作」と呼ばれることになるのだろう・・・これが何度聴いても飽きないパワーを持つ作品だということを考えると、それは実に残念な話だ。
ヴォイス・オブ・ザ・セヴン・ウッズの「Voice of the Seven Woods」を脱兎ゲット!
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