■ラウンド3■
These New Puritans
/「Beat Pyramid」
英南東部のコースト・タウン、サウスエンドで05年に結成された4人組ジーズ・ニュー・ピューリタンズ。子供の頃からバンドを夢見てきたというジャックとジョージのバーネット兄弟を中核とする彼らは、コンピレーション参加を経てユニークなリリースぶりで知られるAngularから限定EP「Now Pluvial」を発表(06年)。ポスト・パンク、インダストリアル、ミニマリズム、ヒップホップ、アヴァンギャルド、ノイズ・ロックと多彩なジャンルをシャッフルしたデビュー・フル・アルバム(公式バイオいわく「単純さと複雑さが取っ組み合い、イノセンスと暗さが踊り合う音」「安易な引用やカテゴライズを寄せ付けないバンドだけに、まずは自分の耳で確かめてみてほしい」云々)でインディ・シーンにバズを巻き起こしている・・・
C―へえ。ミッシー・エリオットの「Get Yr Freak On」みたいなビートで冒頭からダンサブルだね。
AB―ゴールドスミス・カレッジの根城としても知られる南ロンドン/ニュー・クロス発のアングラ・レーベル、Angularの秘蔵っ子ジーズ・ニュー・ピューリタンズのデビュー・フル・アルバムです。双子のバーネット兄弟を擁するこのバンドに惚れ込んだのはエディ・スリマン・・・だけではなくドミノも同様で、特別に英国外発売のライセンス契約を結ぶに至ったとか。
C―エディ・スリマンってなに?
AB―(無視)
C―それはどうでもいいけど、サンズ&ドーターズのサウンドはある意味分かりやすすぎで引き込まれる不思議さや神秘性が足りなかったから、このアルバムの方が俺はずっと性に合うし好きだよ。ポスト・パンク、R&B・・・プロディジー、あとなぜか分からんがマニックスの「Holy Bible」を思い起こすなあ。④はアンワウンドみたいでかっこいいし、⑩はアレック・エンパイアかM.I.A.、⑪はHOODみたい。リミックス集が1枚作れそうなアルバムじゃない?
AB―⑥はさながら「Choci Loni」ミーツ・ギャング・オブ・フォーと言ったところ?⑦のギター・リフは文句なしにかっこいいし、ビートもダイナミック。プロデュースはデペッシュ・モードを始めとするMUTE系バンドを手掛けたことで知られる御大ガレス・ジョーンズです。
C―なるほど、道理で硬質な80年代風インテリ・アート・ロックになってるわけだ。アルバムのタイトル通りビートの組み方も凝ってるし、意表をつく曲の展開・構造はグライムやプログレッシヴなヒップホップを思わせる。ダンス系の曲ばかりじゃなくアトモスフェリックなインストも混じったり、アルバムのシークエンスも変化球で面白い。よく考えて作ってある。
AB―でもドラムスのプレイは相当にしゃかりきだし、人力ダンス・ミュージックみたいなところがある。ニュー・ウェイヴを今風R&Bのデジタル/フューチャリスティック・ビートでリミックスしたというか。
C―そうだね。ギター・サウンドやメロディにUKポスト・パンク・バンド、たとえばギャング・オブ・フォーやワイアーからの影響が強いし、ワイアー好きとしてはこういう若いバンドがイギリスから出てくるのは嬉しい。
AB―ちなみに平均年齢20歳。ワイアーを思わせるバンドはたとえばザ・レイクスとか最近珍しくないけど、この人達は鋭角的なサウンド・スタイルだけではなくポスト・パンクのモダニズム精神を多角的に消化しようとしているね。でも本人達はこちらの憶測を肩透かし、ウータン・クランやJディラを影響源に上げてたりします。
C―そうなんだ。RZAのSFっぽい音作りが好きなのか?
AB―アルバム・ジャケットからして神秘性とかマジックが好きそうだし、少林寺にインスピレーションを求めたウータンにアイデンティファイするのかもね。たとえばクラクソンズやホラーズほどキャッチーではないけど、彼らみたいにレコードやバンドを完結した小宇宙に見立てて遊び、作りこんでいくタイプなのかも。でもTNPの見た目は今風のスキニーなインディっ子でヒップホップとは一切縁がなさそうだし・・・ウータン発言の真意は「僕達、普通のイギリスのインディ・ロックは聴いてませーん」というアンチ・ラッド・ロックな意思表示でもあるのでは?
C―にしてもこのヴォーカル、好き嫌いが分かれそう。だんだん鼻についてくるな。
AB―良く言えばクールでエッジー、悪く言えば無味乾燥。歌っているというよりフレーズの復唱だよね。ザ・フォールの曲「New Puritan」にちなんだというバンド名からしても、マーク・E・スミス先生の仏頂面&傍若無人な叫び~Repetition!がお手本なのかも。⑧⑨なんてもろにそうだね。
C―しかしフォールよりむしろギャング・オブ・フォーだと思うし、うーん・・・MES特有のダダな雰囲気と徹底したニヒリズム、そこから生まれる人を食ったシュールなユーモア・センスまではいまいち感じられないな。
AB―⑪のブラックなユーモアがこの子達の限度なのか。
C―②の歌詞とか結構安易じゃない?先が読めるよ。
AB―たぶん、実はあんまり言いたいことはないんだよ。
C―Noughtiesのバンドらしいね。
AB―人生経験の浅いガキが、無理してストーリーテリングするよりはマシだと思う。ヴィジュアルから曲のタイトルまでかなりガチガチにデザイン/プロセスされてるし、数字や記号、図形にひとかたならぬこだわりがあるみたい。アルバムの1曲目がラストと円環構造で繋がっていたりとかパズルや謎解きめいたひねりも加えてあるし、カット&ペースト型の定例に捕らわれない曲の書き方も含めて、音楽を数学や幾何学みたいに捉えてるバンドという印象かな。たとえばこれでライヴがXXティーンズみたいに笑えるくらい不機嫌で客をナメるくらいの不敵な自信があればかっこいいと思うけど、音楽紙のライヴ・レヴューを読む限り乙にすましたパフォーマンスらしい。
C―ナチュラルさやオーガニックな面はカケラもない音楽=アート・ロックをやってるんだから、一緒にみんなで仲良く歌いましょ~なノリがゼロなのは当然だよ。それを求めても無駄だけど、説得力は欲しいね。スタイルの目の付け所もコンセプトもいいんだけど、まだパフォーマーとしての確信がない歌い手ってとこなんだろうな。その裏返しで妙に気取ったライヴになっちゃうってのは、よくある話だよ。
AB―育ちも良さそうだし、実は恥ずかしがりで痩せっぽち、頭でっかちなミドル・クラスのキッズなのかも。というわけで、MESは一日にして成らず。
C―でも少なくともこのバンドは耳を惹きつけられるような何かを持ってるし、今回聴いてきた中で一番好感が持てるアルバムだよ。これがファーストなんだし、俺は次の作品に期待を繋げる。
AB―うん。⑤や⑬みたいな空間を感じさせる曲をもっと押し広げてくれればいいなと思う。ちなみにホラーズやTNPといったネオ・ゴス的感性を育んだサウスエンド・オン・シーってどんなところなの?
C―ロンドンからもそんなに遠くない、エセックスにある海辺の街。長い埠頭があるんだ。
AB―へー。ブライトンみたいなところ?
C―いや、あんなにリベラルじゃない。もうちょっと俗っぽくてベタな郊外タウンだよ。
AB―ゴスのゴの字もない、と。
C―その反動だろ、変わり者が出てくるのは。ヴィヴィアン・スタンシャルもあそこで育ったんじゃない?
AB―まじシャン?見直したぞサウスエンド!
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