これはフォークなのか、あるいはアンタイ・フォークなのか? そんな疑問がつい浮かぶ作品だと思う。アメリカ人ネオ・フォーク・アクト、ターナー・コーディ(ハーマン・デューンの友人でもある)のレーベル・メイトだったこともあるドーン・ランズもまた、近年切れ目なく登場しているフォーク系ミュージシャン――ギターをかきむしり、感情の赴くままにシャウトするタイプ――の一群から出てきたアーティストと捉えることができるだろう。しかしもともとケンタッキー州ルイヴィル出身(現在はニューヨークを拠点に活動)と言うこの女性は、他のネオ・フォーク勢の作品と較べてもぐっと洗練されたアルバムを作り上げてくれた。オリジナル盤は昨年リリースされたこの作品が、このジャケット新装リイシューをきっかけにより多くの人間の耳に触れればいいなと思う。
とはいえ、特有のちょっと風変わりな味は残されている。彼女はおもちゃの楽器や安物の楽器(8ドルのギターを使っていたこともあるそうだ)を使うのが好きな人で、過去にリリースしてきたDIYスタイルのアルバム(「Dawns Music」など) ではその手の音がもっと頻繁に登場する。もちろんそうした遊び心はこの新作でも随所にちりばめられているが、トータルで聴くとこの作品からはより成熟したソングライティングを目指した音楽、というフィーリングが伝わってくる。もしかしたらパフォーマーとして活動する傍ら彼女が本業としてやっているレコーディング・エンジニアとしての経験(ライアン・アダムスやジョセフ・アーサー、ヘムらの作品に携わってきた)が少なからずその変化/成長に影響したのかもしれないし、あるいは彼女の生まれ故郷の土に流れる豊かなソングライティングの伝統が顔を出してきたのかもしれないが。
アルバムは、「Bodyguard」のグルーヴで幕を開ける。ドーンの歌声にはちょっとショーン・マーシャルを思わせるところがあり、キャット・パワーのあの絶妙にスモーキーな雰囲気すら漂っている。印象的な1曲目だし、こういう曲でスタートするアルバムは何度でも繰り返し聴きたくなるというもの。
アルバムを聴き進むに従って、たとえばニーナ・ナスターシャを彷彿させる抑揚、あるいはタラ・ジェイン・オニールにも似たムーディな内省がたっぷりと聴き手の耳に響いてくる。とはいえ、ドーン・ランズは他の女性アクトとは異なる独自の世界をきっちり持ったアーティストであり、時に質素では?とすら感じる薄いサウンドにも拘らず、繰り返し聴くうち、この作品からは繊細に織り込まれた深みが立ち上がってくる。じわじわと激しさが迫ってくる「I‘m In Love With The Night」のような曲は、そこらの安易なバスカー系フォーク・シンガーには絶対に書けない類いのトラックだろう。
アコギを手に歩き続ける彼女にとっては、この作品はちょっとした「前進」にすぎないのかもしれない。だが、フォークであれアンタイ・フォークであれ、ギターを爪弾きながらパーソナルな思いを綴るソングライター達が世界中のファンを魅了し続けてくれれば、ドーン・ランズにも大きなチャンスがいずれ訪れるかもしれない。何はともあれ、このアルバムが近年発表されたモダン・フォーク系レコードの中でも優れた1枚であることは間違いない。
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