必要最低限にまで絞り込み、ソリッドに研ぎ澄まされた「パワー・トリオ」というのはロックの歴史の中に数々の名物バンドを生み落してきた。たとえばジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスが終わりを告げた後、ジミはマナサスのような「スーパーグループ」を結成する道を選んだだろうか?答はもちろんNO。彼は再び、バンド・オブ・ジプシーズで3人組の可能性を探求することになった。
オス・ムタンチスにヨ・ラ・テンゴ、ビッグ・スリーからダーティ・スリーまで、トリオ編成のバンドというのは無駄を削ぎ落としつつも厚みのある優れた音を出してくれるし、4人組バンドのやんちゃな弟みたいにやる気満々とでもいうか、人数の上では劣るくせに、時に彼ら以上に優れた結果をもたらしもする。また、文字通り「空間」を活かせるパワー・トリオの醍醐味というのはいつだってライヴにあるもの(あのELPやフォーカスですら優れた瞬間を生み出してきたんだから大したものと言える)。そんなマジカルな数字である「3」が今も健在であることを証明する作品が、今年に入って既に2枚登場したのは嬉しい話だ。
まず、トロント出身:ボーン・ラフィアンズの「Red,Yellow And Blue」。一聴したところではヴァンパイア・ウィークエンドのカナダから来た従兄弟・・・?という印象を与えるこの作品は、アップビートなシャウトや快活なギター・プレイであふれている。しかし繰り返し聴くうちに、彼らの三原色のようにクリアなサウンドと磨き上げられた表層の奥から、もうひとつの古典的なパワー・トリオ=ヴァイオレント・ファムズの姿が思い浮かんでくる。ヴァイオレント・ファムズもボーン・ラフィアンズと同じように即口ずさめる親しみやすいメロディをぎりぎりまで削ぎ落とすことのできるバンドだったし、同時にバブルガム・ポップ的な曲調とは裏腹に長く愛聴できる奥行きも維持していた。とはいえヴァイオレント・ファムスの曲が常にどこかしら社会の内側に潜む暗部を歌うものだったのに較べると、ボーン・ラフィアンズはもうちょっと曖昧にアップビートで、プリズムの屈曲を通した太陽から生まれたサンシャイン・ポップという趣きがあるのだけど。
パワー・トリオとの比較で言えば、もうひとつの(実質3人組である)トリオ=アニマル・コレクティヴ作品を手がけたプロデューサーが本作に当たっていることで、彼らとの共通点も指摘できるだろう。しかし、それはボーン・ラフィアンズの楽曲タイトルにある動物園のような雰囲気からくるものとも言えそう(シングル「Hummingbird」はイギリスの携帯電話会社のCMソングに起用された)。「Badonkadonkey」はサウンド面でもっともアニマル・コレクティヴに近い曲だし、字余り気味の陽気なこの曲のノリは、アニマル・コレクティヴの楽曲同様人々に微笑みをもたらすものだろう。アルバムの最終曲「Red Elephant」はギター・ベース・ドラムがそれぞれテンポを変えていく中ポップなフックが縦横無尽に広がっていく優れた曲で、聴き終えた後も頭にこびりついて離れない。繰り返し聴くことで味が出てくるアルバムとも言えるし、また人によっては逆に即効作用のあるキャッチーな作品かもしれない。そのどちらにせよこのアルバムは聴くほどに色んな表情が見えてくるし、それに値するだけの才気を感じさせる1枚だと思う。
お次はカナダからぐーっと南下して、テキサス:オースティンからやってきたラウドな3人組ホワイト・デニム。こちらはブルー・チアーの音圧がお手本らしいが、同時にミニットメンの加速度も持ち合わせた連中と言える。激烈なライヴ・パフォーマンスとは異なり、アルバムはもっとアート・ロック風の凝った作り。ブルー・チアーの名作「InsideOutside」を彷彿させつつ、ペダル全開でぶっ飛ばしてもくれる仕組みだ。ゆえにマニアックな評論家連中が絶賛するのは当然の話だし、その一方で誰もが何かしらエンジョイできる要素を見出せる作品と言える。
とはいえこの作品は少々野心的過ぎでもあって、たとえば何曲かで聴ける曲を繋ぐブリッジは聴き手によっては「ちょっとかっこつけすぎじゃない?」と感じてイライラするかもしれない。しかしこのアルバムに文句をつけるとしたらたかがその程度のもので、それ以上に聴きどころが多過ぎる!と思えるほどのふるった内容になっている。アナログ盤のA/B面共にばっちり楽しめる作品であるのはもちろんだし、ビートルズ「Revolver」のプロダクションを思わせるあたたかなサウンド作りとディーヴォ的なオタク味、そしてブルー・オイスター・カルトばりのリフ・パワー・・・などなどいくつもの面を兼ね備えたこのアルバムは、聴き込むほど味が出る音楽であると同時に、近年のレコードにつきものの空疎なアイロニーやパスティーシュとは無縁のところで鳴っている清々しさを感じるものだと思う。
どちらのバンドも、(パワー・トリオの常で)レコード以上にライヴでこそ映えるバンドではある。しかしこの2枚はレコーディング作品として見事に成り立っているし、「Three Is The Magic Number」のフレーズがまだ有効であることを証明するいい例と言えるだろう。
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