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08/12/31|My Personal Best 2008 Vol.4
極私的年間ベスト―④
08/12/30|My Personal Best 2008 Vol.3
極私的年間ベスト―その③
08/12/29|My Personal Best 2008 Vol.2
極私的年間ベスト―その②
08/12/28|My Personal Best2008 Vol.1
極私的年間ベスト―その①
08/11/25|TITAN:It's All Pop!
Various Artists(Numero Group)
08/11/18|Grace Jones
Hurricane(Wall of Sound)
08/11/12|Deerhunter
Microcastle(4AD)
08/10/29|Department of Eagles
In Ear Park(4AD)
08/10/13|Fucked Up
The Chemistry of Common Life(Matador)
08/10/02|TV On The Radio
Dear Science(4AD)
08/09/29|Arthur Russell
Wild Combination--a portrait of Arthur Russell
08/09/27|Jaguar Love
Take Me To The Sea(Matador)
08/09/07|Sunken Treasure Vol.3
Nico/The End(1974)
08/08/24|The Week That Was
The Week That Was(Memphis Industries)
08/08/12|The Hold Steady
Stay Positive(Rough Trade)
08/07/29|Born Ruffians/White Denim
Red,Yellow and Blue(Wrap)/Working Holiday(Full Time Hobby)
08/07/25|54-71
I'm not fine, thank you. And you?(contrarede)
08/07/23|Beck
Modern Guilt(XL)
08/07/15|Pendulum
In Silico(WEA)
08/07/11|Shearwater
Rook(Matador)
08/06/23|Weezer
Weezer aka Red Album (DGC/Interscope)
08/06/14|Portishead
Third(Mercury)
08/06/01|Nick Cave & The Bad Seeds
Dig, Lazarus, Dig!!! (Mute)
08/05/31|Gnarls Barkley
The Odd Couple(Downtown/Atlantic)
08/04/30|Neon Neon
Stainless Style(Lex Records)
08/04/12|Kelley Stoltz
Circular Sounds(Sub Pop)
08/04/07|Bumper Review 4
The Kills
08/04/07|Bumper Review 3
These New Puritans
08/04/04|Bumper Review 2
Lightspeed Champion
08/04/04|Bumper Review 1
Sons and Daughters

2008/04/04

Bumper Review 2

Lightspeed Champion

■ラウンド2■
Lightspeed Champion
「Falling Off The Lavender Bridge」

口上:(オフィシャル・バイオの要約)ミュージカル「ヘアー」や「ロッキー・ホラー・ショウ」を聴いて育ち、カントリー音楽とヒップホップのファンでもあるという若干21歳のデヴ(Devonte)・ハインズことライトスピード・チャンピオン。広範な音楽志向を誇る彼にとっては、故郷テキサスからイギリスに移住後、パンク・バンドでの活動を経て結成~ギターを担当していたノイズ・ロック・ユニット=テスト・アイシクルズも「(メンバー)3人がやっていた色んな音楽プロジェクトのひとつ」であり、金儲けのためでも名声を得るためでもなくやっていたTIを続行するのが楽しくなくなった時点で活動を停止することになったのも自然な成り行きだった。そこからデヴはソロとして曲作りに取り組み始め、なんとネブラスカでサドル・クリークの名手マイク・モーギス(ブライト・アイズ他)を迎えてレコーディングを決行!海を越えたコラボの成果やいかに?・・・

AB―お次は打って変わってスウィートなサウンド、タイトルもかわいらしいこちらでーす。
―(最初の30秒で)あー、「ミスター・エキセントリック」だろ、これ?
AB―ははは!その通り。元テスト・アイシクルズのデヴ・ハインズことライトスピード・チャンピオンのファースト・フル・アルバムです。
―このアルバムもサンズ&ドーターズ同様プロダクションは秀逸だね!
AB―そりゃそうだいっ!マイク・モーギスだもん!!スパーキー&ウォームなチェンバー・ポップ風音作りが泣ける~。
―なるほど、ブライト・アイズ的センシティヴSSW作品が彼の狙いなんだ。
ABノイズ・テロリストだったテスト・アイシクルズからは180度の転換と話題です。
―・・・・・・でも、ブライト・アイズっつーよりニック・ヘイワードのソロになってないか、これ?
AB-(爆笑)「風のミラクル」とか?!でも、無軌道なノイズ・パンクからなんとまあリリカルなSSWに転身!という激しいギャップ/二面性が受けてるみたいです。アメリカのエモ系には珍しくないパターンなわけですけども。にしてもデヴって人は根っからの音楽ファンみたいで、そこは好感持てる。ストロークスのファンでもあるし★、たぶんただのワンフとして茶飲み話をしたら非常に盛り上がりそうな人だなあとは思う。
―んー・・・・・・だけど、この作品はマイク・モーギスのプロデュース技のおかげで相当救われてるって気がする。もともとはシンプルなアコギ曲なんだろうけど、プラス・アルファのペダル・スティールの音色やストリングス、ホーンの艶のある音などなど、さすがいい仕事をしてるよ。
AB―このペダル・スティールを演奏しているのはもちろんマイク本人でしょう(惚れ惚れ)!彼を始め、レコーディング時スタジオにいたと思しきブライト・アイズのネイト・ウォルコット、フェイントのクラーク・ビーチルからティリー&ザ・ウォールまでサドル・クリーク周辺組が総結集。ちなみにTIは好きだったの?
―名前のダジャレ(Test Icicles≒Testicle=睾丸)を目にした瞬間一発で不快にさせられたのは覚えてるよ。
AB―ジョークのつもりが、滑ってて痛いっていう。
―ロゴも最悪だったしな。
AB―だけど今から2年くらい前のイギリスには、あんな調子でメタルをアイロニックに転がすバンドって少なくなかったでしょ?ホワイト・スネイクのバッタものヴィンテージ風ツアーTをわざわざネット通販で高い金払って買って、それを着てギグに来てヘラヘラ笑ってるインディ・キッズとか山ほどいたじゃん。
―お前だってメタリカT着てただろ?
AB―でも昔のメタリカはリスペクトしてるけん!
―あっそ。要するにバンド名といいロゴといい、「なんか面白そう」「変わってる」って感じであからさまに人目を引こうとする、その分かりやすいどぎつさ・露骨さに逆に引いちゃったんだよな。
AB―それは今だっているでしょ。Does It Offend You,Yeah?とか、悪いけど音楽聴く前にバンド名からしてゲンナリさせられたもん。しかも、音楽聴いてみたら別に不快でもなんでもないっていう。
―名前とかルックスで衝撃があったとしても、そんなの音楽そのものが良くなくちゃ30秒後には麻痺しちゃうから。
AB―それでもTIはイギリスの一部のキッズには今もリスペクトされてるみたいだよ。常識をブチ壊すクラクソンズ以降のホクストン・アート系だの南ロンドン派の先陣を切って革新的だった・・・とかなんとか。
―そこだよ。スタイルやコンセプトばっかりで、肝心の中身がないっていう。スキニー・ジーンズはいてショーディッチだのホクストンの通りをうろついてる奴なんてそんなんばっかだろ?結局「Nathan Barley」の頃からなんも変わってないんだよ。
AB―クリス・モリス万歳!でもクラクソンズの「Golden Skans」はやっぱ好きでしょ?
―あれは紛れもないポップの名曲!
AB―どうかーん!で、LCに話を戻すとデヴ本人は「TIでやってた音楽は(実は)全然好きじゃなかった」と今になって過去を全面否定。
―そりゃそうだろ。だってこのアルバム、TIと似ても似つかないフォーキィなアコースティック・ポップじゃん。TIってロカストのUK版を目指してるって感じじゃなかった?残念ながらその足元にも及ばなかったけど・・・。
AB―スリップノットが好き!等々の当時の発言がイギリスのメディアで話題を呼んだのを思い出すけど、OMもホット・チップもなんの抵抗もなく平行して聴くエクストリームな日本人の感覚ではそれってごく普通なんだけど・・・と感じたのを思い出します。まあ、音楽ジャンルの村意識/セクトがはっきりしていてフレキシブルになれないイギリス人にとってはあれでもショック・ロックだったんだろうね。
―俺は〝ショック〟も受けなかったし〝ロック〟もしなかったけどな。
AB―そんな風に好きでもない音楽をやってたからこそ、TIもあっけない解散に至ったのでは?
―で、いまやLCとして自己ルネッサンスを図り、セルフ・アイデンティティに忠実なシャイなカウボーイ風な軽みがあって枯れもあるリリカルな青年音楽を作っている、というわけね。メロディは良く書けてるし全体のバランスもいいし、アレンジも質が高い作品だよ。
AB―⑤の冒頭のメロディはいいよね。もっともミドルのブレイク以降にはあまり意味を感じないし、もっと厳しくエディットしてもいいのでは?とは思うくらい長い曲ではある。エピックにしたいのかただダラダラ曲を繋げた結果なのか、焦点が曖昧になっていくのは心残りっす。
―にしても、メインのヴォーカルよりバッキング・コーラスの声とかデュエットしてる女性コーラスの方が声域も広いし歌も上手いってのはどうなの?
ABカーシヴ/グッド・ライフの天才ティム・ケイシャーをバックに従えた③なんて、デヴよりコーラス隊の方が聴きごたえあるもんね。ティム素敵~~★と思いつつメインのデヴは大丈夫?と心配にもなります。もともと声そのものに魅力の乏しい人だからしょうがないんだけど。
―この作品、いわゆるアメリカのエモっ子に多い「告白調」の内省的アルバムなの?
AB―たぶんそうだと思う。歌詞はチェックしてないからよく分からないけど、雑誌のインタヴューを読むと「誰かにそばにいてほしい」とか「僕ってダメっ子」みたいな自虐弱音をよく吐いているので推して知るべし。そのモジモジなキャラに違わず、この人の音楽的ヒーローってウィーザーのリヴァースなんだって。猛烈なシャイさの裏返しで妙に淡々としてしまう曲がりくねった歌いっぷりにもその温度は感じます。
―そういえば前に観たライヴでも「Buddy Holly」のカヴァーやってたよ。
AB―マジの助?!許せーん(ムキー!)それより自分の曲で勝負しろ~~!でもまあ、だったら間違いなく日本にはサポーターが生まれそうだね。ナイーヴで、でも少し「不思議ちゃん」なエモ詩人、周囲からなぜか浮いちゃって悲しいんだよボク・・・という自意識過剰タイプの人なんだろうな。ウィーザー人気が永遠に低いイギリスはともかく、オタッキーな日本人にはどんぴしゃかも。
―でも、とにかくこいつ気に触るんだよなー。
AB―なんで??
―あのルックスがさ。
AB―こっちがルックスのことを口にすると「音楽と見た目は関係ない!」って突っ込むくせに勝手だなあ。別にいいじゃん!:(
―すごくこう、アテンションを求めて必死こいてがんばってる感じがしない?無理があるのは俺はいやなんだよ。
AB―でも、この人がラフ・トレード・ショップで買い物してるところを何度か見かけたけど、普段もああいう格好だよ。暑苦しい毛皮の帽子を律儀にがっつり被って額縁眼鏡、ギター・ケース抱えて貧乏そうにウロウロ。
―そうなんだ。
AB―うわべや立ち居振る舞いは奇抜に見えるけど、きっとマジに天然さんで熱心な音楽好き青年なんだよ、この人。仲間内にひとりくらい絶対いるでしょ?引きこもり気味で変わり者、でも音楽にはやたら詳しい(でも現実社会にまったく対応してない)愛すべきピュア男。この人もそこらへんをギミックと誤解されないといいんだけどね。まあ、マーク・ジェイコブスの来季キャンペーンにうっかり起用されないことだけ祈りましょう!ちなみに、さっき話に出たバッキングの女性ヴォーカルはロンドンが誇るアンタイ・フォーカー(?)ことエミー・ザ・グレイトです。
―あー、だからなのか!ターボ・フルーツのギグの前座で観たんだけど、フローレンス&ザ・マシーンのへなちょこフォークの後に彼女とLCが一緒に出てきたんだ。
AB―私はこの人を去年ティーネイジャーズの前座で観たんだけど、バックのバンドがまだ形になってない&メロディと声がフラットなのを無理して長い曲に繋げていくって感じでライヴとしてはきつかったなぁ。期待していたから余計そうだったのかもしれないけど、今年SXSWに出たりして場数を重ねたことで今後パフォーマンス面は改善されていくと思います。それ以上に、ティーネイジャーズの愛の感じられない80年代パスティーシュ~サブカル・ジョークがアイロニーの塊に思えてウザかったのが鮮明に記憶に残ってる。ちなみに、LCは新世代アート・ロックのひとつと看做されていますがそれには賛同する?
―ああ、あのObserver紙がブチ上げた「ニュー・エキセントリックス」って新ジャンル?(苦笑)。第二次ブリット・ポップとも言える今のバブルが飽和して、定型にしばられないアクトが台頭していること自体は嬉しいよ。ただ、見た目の風変わりさだのいかにも~なエキセントリックさで勝負するのはやめて普通にやってくれってこと。このアルバムのプロデュースとアレンジは、高く買うけどね。
AB―グレアム・コクソンからクオモまでギーク・シックには目がない自分だけど、いまやそれが「眼鏡君の内面吐露ロック」みたいにひとつのカテゴリーとして成立した感のある今、LCが始めからそこを狙ってるように見えるのは避けがたい。このアルバムを何回か聴いて感じたのは、オーガニックでストリングスなどアコースティック楽器を多く使った多層型の音をバックにした場合メロディの強さ・歌い手の自我=どうしようもなく匂ってくる体臭が大事だと思うんだけど、にも拘らずサウンドの美しさにある意味脱臭されて、旋律そのものに「ハッ」とさせられないのが惜しい作品だなということ。考えすぎというか凝りすぎというか、メロディにナチュラルなひらめきが薄いからアルバム後半まで聴くと息切れしてしまうのよね。まあ、たとえその点を面と向かって指摘してもこの人は「エヘヘ、その通り!僕はダメ男だからさ。ごめんね~」でスルーしちゃいそうだし、多作という評判のこの人がたとえば次のアルバムでまったく違うサウンドに挑戦しても意外とは思わない。Whirlwind Heatとの先行スプリットもこのアルバムの音とはまったく違ったし、流されやすい人なんじゃない?
―この手のカントリー・フォークな音はおおむね好きなくせにシビアだね。
AB―いや、好きだからこそクオリティ・チェックにはシビアなんだよ。次に何をしでかしても大丈夫!という余白、間口を敢えて残している確信犯という気もするし、だったら根本はTIの頃と変わらないってことだと思わない?要するにこの作品も「彼の数ある音楽プロジェクトのひとつ」ってことで、楽しくなくなったら他のサウンドに移行しちゃいそう。メタルからヒップホップまでジャンルに関係なく色んな音楽が好き!という姿勢には共感するけど、ファンじゃあるまいし、お金をもらってるミュージシャンとしてはまず何よりも自分の色を確立してほしいもんです。彼のアイデンティティ模索の旅路に1作ごとにきっちり丁寧に付き合ってるほどのヒマは、たぶん誰も持ってないでしょう。
―にしても近頃のドミノって、フランツでドカンと当てて以降アート・ロックの金鉱を再び!と必死こいてる気がするんだけど?売り出しやすいフックのある、学生が飛びつきそうなヒップスター・アーティストばっかり出してない?
AB―LCの場合はTI解散からタナボタで契約したんだと思うけど、そもそも個であってまとまりのないアート・ロックというシロモノが、ひとつのマーケティング・フォーミュラになりつつある、ということ?
―そういうこと。
AB―でも新人だけじゃなくドミノが再発にもがんばって地道に投資してる点は評価すべきだよ。ニュートラル・ミルク・ホテル、オレンジ・ジュース、ファイアー・エンジンズ、ヤング・マーブル・ジャイアンツ、ジョゼフK、トリフィッズ・・・と来たらゴー・ビトウィーンズも付け加えたいとこだけど、他社が再発済みです。
―どれもマストなバンドじゃん。
AB―それはそうだし日本のオールド・スクールなネオアコ・ファンには今さらの顔ぶれなんだけど、いったん廃盤になっちゃうと若い子はなかなか手を出さないものだから。ニュートラル・ミルク・ホテルなんて、発売当時たちどころにロンドンの中古盤屋に落ちてきて500円コーナーに山積みだったのが嘘のような話っす。たかが10年前なのにね。とにかく丁寧なパッケージとかライナーノーツ、ボートラに所詮弱い物欲主義者な自分です!と言うわけでドミノの皆さん、次はフィーリーズの「Crazy Rhthms」デラックス再発、Yung Wuの「Shore Leave」をお願いしまーす。
―最近「Good Earth」を聴いたけど、あれは名作だね。
AB―22年遅いっつうの!

ライトスピード・チェンピオンを脱兎チェック!


Bumper Review 1

Sons and Daughters

フランツ・フェルディナンド、アークティック・モンキーズと人気バンドを立て続けに世に送り出しUKインディ界を代表する人気レーベルとなったドミノからドカスカ08年春の新作が出ましたよー★というわけで、対談形式のスペシャル・バンパー・レヴューをシリーズでお届けしていきます。

■ラウンド1■
Sons And Daughters
「This Gift」
口上(※オフィシャル・バイオより):サンズ&ドーターズは06年夏からこの作品に取り組み始めた。テレビも電話もない隔離されたスコットランド西岸の納屋を改造した家に閉じこもった彼らは、1日8時間「自分達のブロンディーやザ・スミス好きでもある側面を反映させるべく」グレートなポップ・ソング作りに取り組んでいった。レーベルがプロデューサーとして提案したのはバーナード・バトラーで、スウェードのファンだったというバンド側はこのアイデアに即反応。とはいえ02年以来リー・ヘイゼルウッドやレナード・コーエンのメランコリーとガレージ・ブルースの混合でフランツ・フェルディナンド、ニック・ケイヴといったシンパを獲得してきたS&Dはバーナード・バトラー本人にとっては未知のバンドであり、両者の呼吸が合うまで時間がかかった。ゆえに緊張の高まる場面も少なくないスムーズとは言いがたいレコーディングだったが、ジョー・ミーク話をきっかけに歯車が合い始め、結果バーナードを触媒に(ジョニー・マー直伝の12弦ギターもこの作品で活躍)バンドはこれまで切り開いてこなかったサウンドを生むに至った・・・

オーディオバニー(以下AB)まずは1枚目(CDポン!)。
キャプテン(以下C)・・・これ誰?
AB―グラスゴー発の男女4人組ガレージ・ロッカーズ、サンズ・アンド・ドーターズの新作です。プロデューサーの方がもしかしたらバンドより有名かも??
―だれ誰?他にどんな作品を手掛けた人?
AB―リバティーンズとか・・・。
―え、ミック・ジョーンズ?!
AB―いんにゃ。答はバーナード・バトラー。最近ではラフトレがマネージメントを担当する歌姫ダフィーのデビュー作参加&ヒットで英プレスから「00年代のジェリー・ウェクスラー」と称され、ケイジャン・ダンス・パーティからブラック・キッズのデビュー作まで引っ張りだこ、UKインディ界から人望厚いプロデューサーのひとりと言えるでしょう。
―ちっ!あの前髪男か。しかしこのバンド、メンバーの女の子のルックスは俺の好み なのに音楽そのものに魅力が薄いなあ。
AB―何せメイクのスポンサーはMACだしね。羨ましいなー。
―マックだかなんだか俺にはどうでもいいが、よくプロデュースされた作品なのは認める。
AB―音の作りがなにげに50年代風、粒の立ったサウンドの中にもギターのトゥワングやエコー、エフェクト使いなどレトロ・モダンなスパイスが随所に効いてますね。
―グルーヴもドライヴ感があるし、歯切れのいいタフ&タイトな音にまとめてあってプロダクションンの質は高い・・・・・・でもなんか物足りないのはなんでなんだ?
AB―早くも手厳しい意見っすね。
―いやでも、アルバム前半なんて「Love The Cup」とか「The Repulsion Box」と大して変わらない印象だよ。04年頃かな、ファイナリー・ファーナセズの前座で観た時はいいバンドだと思ったんだけど。
ABアーチー・ブロンソン・アウトフィットの前座で観たけど、頭数曲のインパクトが最後まで持続しないバンドと感じたのは覚えてる。「カントリー&ウェスタン・ガレージ」っていう方向性そのものは個人的に好きだから、もったいないと思ってしまう。
―プロデューサーの手腕で音は引き締まったけど、バンドそのものは4、5年前から実はあんまり進歩してないって印象だな。でも、スコットランドのバンドはこういう音楽やらせると上手いよね。
AB―そうなの?どういう音楽のこと?たとえば誰?
―テキサス。
AB―(爆笑)。
―いやいや、別に悪い意味で言ってるんじゃないよ。要するに「酒を飲みながらガンガン盛り上がれるグッドタイム・ミュージック」ってこと。そのノリはちゃんとある作品でしょ?
AB―なるほど。確かに、盛り上がってるパーティの最中にこのアルバムを爆音で鳴らしたら、みんなひゃっほー!と踊り始めそう。でもテキサスのたとえはあんまりだ。S&Dはあそこまで田舎っぽくないし、単なるグラスゴー・カウボーイズ/ガールズとは違うんじゃないかと・・・しかしリフがイケそうでイケないのが惜しい!デュアン・エディっぽい③のギターに「おおっ?」と思わされてもコーラスが入るとしょぼくなるし、定番の♪ナー・ナ・ナ・ナ・ナ~・・・コーラスから威勢良く始まる④も「ここぞ」ってとこでパンチが弱い。せっかく色んなギター・サウンド使ってるんだから、もっとガツンといってくれていいのに。⑤はたぶんブロンディーのつもりが半端に80年代ポップぽくてB-52S、いや下手したらゴーゴーズ?
―⑦は「Mother‘s Little Helper」のリフにモータウンのグルーヴを掛け合わせましたって感じ?⑩はやっぱり俺にはテキサスに聞こえるし・・・あ、⑫はパンキーでいいな。バズコックスっぽい切迫した勢いがあってストレートで一番好き。
AB―このバンドはヴォーカルのアデルちゃんが看板らしいけど、彼女の声に個性やキャラクターを感じられないのがきつくなってくる。
―女性ヴォーカル全般に対して基本的に偏見を抱いてる歪んだ人間にそこまでクソミソ言われたくはないだろう、向こうも。
AB―基本的にキャンキャン気味の声だけに表現に深みや幅がないんだろうな。だから音楽の持つドラマやパッションを演じようとせず、気負わず素直に「歌ってる」風情の⑨が私には一番聴きやすいのかも?コーラスもフリートウッド・マックっぽくて、無理にやってる感じがないしね。でもまあ、彼女の勝気なロック娘風声に対してしのぎを削るはずのカウンター的存在なはずの男性ヴォーカル、これが基本的に存在感薄いのも男女掛け合いのパワーを殺いでいると思う。
―この対談みたいに?
AB―その通り。いやしかし、ソングライティングだけとればロング・ブロンズの方がよっぽどキャッチーに・・・まあワンパターン気味ではあるけど、器用にポップに書けてるし、ブルース~ガレージ系の音楽性ってことならデューク・スピリットハウリング・ベルズの暗さの方が自分の好みです。たぶんこの人達、すごく生真面目に音楽をやっているんだと思う。シリアスなのは悪いことじゃないけど、セクシーさとユーモア、このふたつがSASSYなフィメール・ポップの要素と思う自分としてはもうちょっとユーモアをプリーズ。にしても以前はもっとヘンな個性やエッジがあったのに、⑥なんて普通にラジオでかかりそうなロック・チューンだね。音楽ライターの一部が「この作品でS&Dはメインストリームに浮上するだろう」と評しているのはこのことなのかな?でもバンドが本当にやりたいことがそれなのか、腹が括れているのか、聴いているうちに分からなくなってくる。
―とにかく音楽的にも楽曲のスタイルにしても幅が狭くて繰り返しのリスニングに耐えない、そこが気になる作品だね。
AB―もともとコンセプトやセンスが先行しているアート系のバンドなんだろうし、それはある程度仕方ないのでは?
―それにしたって一面的すぎだよ。最初から最後までノリのいいアップ・テンポ/タフ目の曲ばっかりで押せ押せ、スローな聴かせ曲がほとんどないのも単調さの要因。もっと曲作りの技を増やしてほしい。
AB―ひたすらヴァニラ味、ヴァニラは美味しいけどどこまでもヴァニラ味だと飽きてくるアイスクリームってこと?
―うん。それとなんかこう、友人サークル内で終始しちゃうバンドって印象を抱くのは気のせいかなぁ?ライヴに来るのはヒップな友達と知り合いのヒップなバンド仲間ばっかり、みたいな。デビューした頃の出だしは期待が持てた連中だけど、申し訳ない、この作品そのものの賞味期限は短いと俺は思う。
AB―この人達が目指しているのはもしかしてX・・・・・・?
―冗談じゃねーよ!(怒)
AB―まあ、だとしたらジョン・ドーに鍛えてもらうか、オークリー・ホールの泥くさいガッツを見習ってほしいもんですね。

サンズ&ドーターズを脱兎チェック!


2008/04

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