先日鏡を見たらば、段々親父に似てきたなあと痛感。
自分の力ではどうにもならぬDNAの無慈悲なまでの強靭さをひしひしと感じ、鏡の前でしばし呆然とする31歳の初夏であります。
とは言え、DNAの指令をただ甘んじて受け入れるようでは親父のコピーのまま。そこで、そんな指令には従えませんよと、反抗。親父を自分のライバルに認定し、その大きさと向き合いながら、オレは違うんだと抗ううちに、次第に自分の個性を確立。そうして独り立ちしていくのが男のキングスロード、王道であると思う私はどうにもこうにも少年マンガの影響を受け過ぎていると思うような気がしないでもない。
えー、私の話などどうでもよろしい。
さて、親越えと似たようなテーマは、本家越えという言葉があるように、徒弟関係をはじめ、様々な世界で行われているのはご承知の通り。そして、それは音楽の世界でも例外ではありません。
そんな中、私が最近音楽シーンの中で注目しているのは、
The Prodigyの子供たちによる本家越え
についてだったりする訳です。
というのもここ数年のシーンを賑わしてきたニューレイヴ系のアーティストの音楽からは明らかに彼らの影響を感じさせるものが多いから。
では、彼らが何故そんなにThe Prodigyの影響を受けたのでしょう。ちょっと考えればすぐに答えは出てきます。
というのも、今の20~30歳の(特にヨーロッパの)アーティストの多くは、多感な10代の時期にダンス・ミュージックがチャートのトップに駆け上がった瞬間を目の当たりにしているんです(それは同時にブリットポップの盛り上がりを通過していることも示している訳で、今思えば昨今のダンスとメロディの自然な統合は極めて必然的出来事だったんだなぁと思います)。
で、中でもThe Prodigyっていうバンドは当時のシーンの中で、ビジュアルや映像、メッセージ面も含め、最も禍々しいキャラ&反体制を貫きながら、22もの国々でNo.1を奪取したアーティストな訳です。そんなん世界に散らばる若いキッズにしてみたら、ものすごいキャッチーでダークなパンク・ヒーロー以外の何者でもなかったことは想像に難くありません(日本ではまだ色物として見る向きも多いようですが……)。
そんな訳でThe Prodigyの音楽は今シーンで活躍しているアーティストたちに生々しい爪痕を残した訳です。なんせあのクリクリヘアで甘く切ない牧歌シューゲイジングな世界を奏でるNathan Fakeくんのような御仁でさえ、インタビューの際、言うべきか隠すべきかしばし悩み、顔を赤らめながら彼らの影響を口にするのですから、その影響の大きさ、推して知るべしなのであります。
さて、The Prodigyの子供たちは彼らの影響を自分たちなりに解釈しつつ、他から受けた影響を上手く織り混ぜながら個々のオリジナリティを出しています。
中でも筆者が最近注目&激ハマりしているのはオーストラリア出身の6人組ドラムンベース・ロック・バンド、Pendulumです。
オーストラリアのパースからドラムンベース・シーンの熱いサウス・ロンドンに拠点を移し活動しているPendulumは、ファースト・アルバム『Hold Your Colour』が20万枚近いセールスを記録し、一躍ドラムンベース・シーンの寵児として期待されるようになったバンド。その怒髪天をつくような怒濤のライヴ・パフォーマンスとフリースタイルかつひたすら血流を上げまくるDJで、活動期間僅か6年ながら、現場を中心に高い支持を集めてきた人たちです。ちなみにThe Prodigyのベスト盤リリースの際、“Voodoo People”のリミックスを手掛けたのが彼らです。
これまではサイバー系のサウンドが多かった彼らですが、ドラムンベースの名門レーベル、Breakbeat Kaosでのラスト・シングル「Blood Sugar」当たりから明確にロック色を全面に展開。今回紹介する最新作『In Silico』では、まるで「Linkin ParkミーツThe Prodigy」と呼べそうなハード&ヘビーなリフと連打されるアップリフティングなビート、愛嬌のあるシンセが融合した凄まじいテンションの1枚に仕上がっています。
前作に比べ、ドラムンベース+ロックというテーマにフォーカスしたのもメジャーデビュー作を考えれば正しい選択だったと言えるでしょう。ちなみにUKチャートも初登場第2位を記録と上々の滑り出し。チルドレンたちの中でも頭一つ抜きんでた存在となりました。
The Prodigyのハードコアな側面をエモと共振させたEnter Shikari。The Prodigyのヒップホップ的な側面をグライムの文脈から切り込んでみせたHadouken!、ビートのダイナミズムやブレイクを“Brianstorm”に巧みに組み込んでニューレイヴが盛り上がるシーンにも対抗しうるビートを作り上げてみせたArctic Monkeysと、様々なバンドがそれぞれに多彩なアプローチを見せていますが、Pendulumが楽しいのはThe Prodigyが『Music For The Jilted Generation』から『The Fat of The Land』にかけて見せたロック路線、拡大路線を踏襲している点(チャート・アクションも似てたりする)。つまり、どこかスカしたUKバンドたちがそのスタンスゆえに避けがちな、ある種一番ベタで分かり易いロックスター的な部分を引き継いでいる訳です。
それが彼らの性格によるものなのか、AC/DCからJETまで連綿と続くオージーの血がなせる業なのかは本人の話を聞いてないので判断に悩むところですが、そのマスをかっさらおうという気概に溢れた姿勢に、個人的には拍手喝采を送りたいのです。ベタ大好きっ!
クラブ・ミュージックを中心に書いている筆者としてはThe Prodigyの“Break And
Enter”にもっとヘビーでオルタナ風味満載のギターを乗っけた“Different”当たりが
理想だったりするのですが、ヒット・シングル“Propane Nightmares”やドラムンを通
り越し、ただの8ビートになっているバカシンセ炸裂のメロディック・ロック“Granite”、Soundgardeのクリス・コーネルを彷彿とさせるブルージーなヴォーカルにあっと驚かされる“9,000Miles”など、曲が書けるバンドであることもしっかりと証明。またLed ZeppelinからArcticMonkeysまで、様々なロック・バンドのリフを絵巻にしたような多彩な展開を見せる“Mutiny”、ロックとダンスの高揚感を巧みに掛け合わせ竜巻状に天上に打ち上げるインスト“The Tempest”など、彼らの元々持っているフリースタイリンな魅力もさりげなくアルバムに散りばめられていて、そのプロデュース能力が伊達ではないことが分かります。
あと、ダークなThe Prodigyの世界観に比べ、どこかユーモラスな香りが漂うのも彼らの魅力。それは楽曲に挿入されるシンセの音色や“Slam”や“Granite”のナンセンスなPV。歌い上げ系の曲であるKillersの“Mr.Brightside”をかけながらMCが「YO YO」と無駄に煽りを挟みまくるかなりおバカなDJのスタイルにも反映されているような気がします。是非確認して下さい。
オリジナルなんてもはや存在し得ない、なんて年寄りにグダグダ言われる昨今ですが、んなこたぁない(@タモリ)。
本家越えという視点で音楽を聴いていくと、そのバンドがどうやって自分たちのオリジナルを確立しようとしているのかが見えてきて大変に楽しいし、彼らの個性をはっきりと対称化することが可能です。
Pendulum『In Silico』にもそうした彼らの奮闘の軌跡が見て取れるし、オリジナル不在と呼ばれるジレンマが顕著になっている今の時代をその熱量とテンションでブレイクスルーしていこうとするポジティヴなパワーが漲っていて、こっちもなんだか熱くなってきてしまう訳です。
今年のサマソ来日も決定したことですし、圧倒的と定評のあるライヴ、是非チェックしたいと思います!(できればDJも見たいんだがどっかでやってくれんかのう)
BY yuzuru sato
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